--来月末の大阪G20(主要20カ国・地域)首脳会議で日韓首脳会談は可能だろうか。
「率直に言うと、今のタイミングで会談をする必要はないという意見が多い。徴用問題に対して韓国政府が答えるのか、答える場合はどういう内容かが、G20での日韓首脳会談実現の基本前提となる。訴訟に介入することはできないが、韓国政府としては『1965年の枠組みが今でも有効であり、(両国間の)合意を前提とした修正はあり得るとしても、根幹を覆すことはできない』という立場を見せる必要がある」
--日本の内部や韓国の一部では国際司法裁判所(ICJ)に任せようという意見がある。
「福島産水産物に対する世界貿易機関(WTO)決定に見られるように、国際裁判は双方にリスクがある。結果が出てもお互い納得できないこともある。日本国内でも『ICJで決着をつけよう』という意見は優先順位が高くないと理解する」
--日本に対する中国と韓国の対応に差があると思うか。
「中国は専制国家なのですべてのことが政府の姿勢にかかっている。歴史や領土問題において政府が指示すれば反日の声が高まり、逆に政府が(世論を)封鎖すれば今のように外に全く流れない。ある意味、明快なところがある。半面、韓国は予測不可能というのが最も大きな問題だ。旭日旗問題も日本の立場では『10年前や20年前には問題にならなかったが突然問題になった』と感じるかもしれない。『ゴールポストが何度も動く』という不満が出てくるのもこのためだ」
--国内政治とも関係があると思うか。
「左右対立状況で韓国内の進歩派が親日派問題を取り出せば、日本の立場では『反日』と映る行動がますます正当化される。そのような流れが徴用工問題まで続いたと日本側は認識している」
--それでは日本側の問題は。
「2つあるが、まず韓国との歴史認識差に(過度に)敏感になった。もう一つは韓国社会の多様性が日本人にはよく伝わっていない点だ。ともに改善が必要だ」
--安倍首相は韓国に過度に冷淡ではないか。
「反韓というよりは韓国の政治(風土)に対する不満が強いようだ。しかし政治家であるため、お互いの利害を調節して克服しなければいけない。安倍首相も大きく見て韓国が米中関係で米国側に近い立場を取るのが日本には意味が大きいとよく認識していると思う」
--韓国でも最近、両国関係を改善しようという主張が台頭している。
「対米・対中・対日など外交の基本関係が政権によって極端に変わるのは国益を考えると韓国にもマイナスだ。観光や韓流などを見ると日韓間の交流基盤は強いが、政治問題が発生すれば両国ともに極端に属する人たちによって韓日関係が揺れるおそれがある」
--安倍首相が推進する改憲の見通しは。
「(自衛隊の明記など)憲法第9条を変えるのは緊急性が高くない。安全保障法制(集団的自衛権の制限的行使認定)で多くの安全保障課題は法律でも実現可能だ。改憲は国内的なハードルは依然として高い。東京オリンピックが終わった後2020年後半から安倍首相の任期が終わる2021年の9カ月間に試みることはできるだろう。軍事的紛争が東アジアで発生したり似た状況が生じない限り、日本国民の間では反対が多いはずだ」
◆中西寛・京都大学大学院法学研究科教授=日本国際政治学界の理事長を務めるなど日本国内屈指の国際政治戦略家。第2次安倍内閣の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、民主党政権の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」などに委員として参加するなど現実問題にも関与してきた。(中央SUNDAY第634号)
韓国、中国より米国側に近づいてこそ韓日関係が好転(1)
「率直に言うと、今のタイミングで会談をする必要はないという意見が多い。徴用問題に対して韓国政府が答えるのか、答える場合はどういう内容かが、G20での日韓首脳会談実現の基本前提となる。訴訟に介入することはできないが、韓国政府としては『1965年の枠組みが今でも有効であり、(両国間の)合意を前提とした修正はあり得るとしても、根幹を覆すことはできない』という立場を見せる必要がある」
--日本の内部や韓国の一部では国際司法裁判所(ICJ)に任せようという意見がある。
「福島産水産物に対する世界貿易機関(WTO)決定に見られるように、国際裁判は双方にリスクがある。結果が出てもお互い納得できないこともある。日本国内でも『ICJで決着をつけよう』という意見は優先順位が高くないと理解する」
--日本に対する中国と韓国の対応に差があると思うか。
「中国は専制国家なのですべてのことが政府の姿勢にかかっている。歴史や領土問題において政府が指示すれば反日の声が高まり、逆に政府が(世論を)封鎖すれば今のように外に全く流れない。ある意味、明快なところがある。半面、韓国は予測不可能というのが最も大きな問題だ。旭日旗問題も日本の立場では『10年前や20年前には問題にならなかったが突然問題になった』と感じるかもしれない。『ゴールポストが何度も動く』という不満が出てくるのもこのためだ」
--国内政治とも関係があると思うか。
「左右対立状況で韓国内の進歩派が親日派問題を取り出せば、日本の立場では『反日』と映る行動がますます正当化される。そのような流れが徴用工問題まで続いたと日本側は認識している」
--それでは日本側の問題は。
「2つあるが、まず韓国との歴史認識差に(過度に)敏感になった。もう一つは韓国社会の多様性が日本人にはよく伝わっていない点だ。ともに改善が必要だ」
--安倍首相は韓国に過度に冷淡ではないか。
「反韓というよりは韓国の政治(風土)に対する不満が強いようだ。しかし政治家であるため、お互いの利害を調節して克服しなければいけない。安倍首相も大きく見て韓国が米中関係で米国側に近い立場を取るのが日本には意味が大きいとよく認識していると思う」
--韓国でも最近、両国関係を改善しようという主張が台頭している。
「対米・対中・対日など外交の基本関係が政権によって極端に変わるのは国益を考えると韓国にもマイナスだ。観光や韓流などを見ると日韓間の交流基盤は強いが、政治問題が発生すれば両国ともに極端に属する人たちによって韓日関係が揺れるおそれがある」
--安倍首相が推進する改憲の見通しは。
「(自衛隊の明記など)憲法第9条を変えるのは緊急性が高くない。安全保障法制(集団的自衛権の制限的行使認定)で多くの安全保障課題は法律でも実現可能だ。改憲は国内的なハードルは依然として高い。東京オリンピックが終わった後2020年後半から安倍首相の任期が終わる2021年の9カ月間に試みることはできるだろう。軍事的紛争が東アジアで発生したり似た状況が生じない限り、日本国民の間では反対が多いはずだ」
◆中西寛・京都大学大学院法学研究科教授=日本国際政治学界の理事長を務めるなど日本国内屈指の国際政治戦略家。第2次安倍内閣の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、民主党政権の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」などに委員として参加するなど現実問題にも関与してきた。(中央SUNDAY第634号)
韓国、中国より米国側に近づいてこそ韓日関係が好転(1)
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