昨年5月。6月13日の韓国の全国地方選挙日を控えて突然、ワシントンがその前日の6月12日に史上初の米朝首脳会談をシンガポールで開催すると発表した。野党・自由韓国党からは悲鳴があがった。そうでなくとも敗色が濃厚だが、与党に有利なメガトン級の津波が発生したからだ。慌てた韓国党の内部では怪談が飛び交った。「政府・与党が北朝鮮と米国に働きかけてこのような選択をすることになった」という主張だった。「主体思想派運動圏出身の与党関係者が平壌(ピョンヤン)と、米国側と親しい政府関係者がワシントンとそれぞれ接触して12日に決めた」という「ディテール(?)」まで出てきたが、物証は一つもなかった。
当時の洪準杓(ホン・ジュンピョ)韓国党代表は「トランプ大統領は外交もビジネスと考えるのか」というメッセージで米国の心を変えようとした。しかし米朝間で確定した首脳会談を韓国の野党が覆す能力はなかった。会談は予定通り開催され、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の抱擁、韓米合同軍事演習中断宣言など会談で出てきた結果は、韓国党に完全に不利なものだった。韓国党が6・13地方選挙で17カ所の広域団体長のうち15カ所で敗れ、歴代最悪の惨敗を喫したのは、前日に開かれた米朝首脳会談が間違いなく大きな影響を与えた。
ところが今回はトランプ大統領が韓国党の立場になった。本人がハノイで金正恩国務委員長と再会する27-28日、米国ではトランプ大統領の元顧問弁護士だったマイケル・コーエン被告の公聴会が開かれるからだ。ハノイと12時間の時差を置いてワシントンで開かれるこの公聴会はトランプ大統領を深刻な政治的窮地に追い込むかもしれない「核爆弾級イベント」だ。CNNなど米国メディアはハノイでの米朝首脳会談よりもコーエン被告の公聴会に関するニュースが多い。
トランプ大統領の下で12年間にわたり参謀として活動したコーエン被告は、トランプ陣営が大統領選挙過程でモスクワと内通して助けを受けたという、いわゆる「ロシアスキャンダル」の核心証人の一人だ。コーエン被告は昨年12月の1審裁判でトランプ陣営の選挙資金を流用してトランプ大統領のスキャンダルと関係がある女性2人に口止め料を支払い、議会で偽証した疑いで懲役3年を言い渡された。もともと懲役5、6年が予想されていた。しかしコーエン被告が減刑を受けるためにロバート・モラー特別検察官チームの捜査に積極的に協力するとして司法取引が成立し、3年刑を受けたと伝えられている。
コーエン被告はトランプ大統領に提起されたあらゆる疑惑を覆った。そのコーエン被告が公聴会で口を開けば、トランプ大統領のロシア内通疑惑のほか、財界人当時の脱税、政治資金法違反疑惑、トランプ財団の不透明な事業慣行など敏感なイシューが次々と出てくることも考えられる。
トランプ大統領の体はハノイで金正恩委員長と核談判をしながらも、心はワシントンに向かっているはずだ。同時に進行中の公聴会でコーエン被告が何を話をしているかが気になるしかない。すでにコーエン被告は20日、「米国国民は公聴会での私の話に期待してほしい」と述べ、大々的な暴露を予告した。
おそらく28日に2日間の米朝首脳会談を終えたトランプ大統領が翌日ワシントンのアンドルーズ空軍基地に到着すると、米国の記者は会談の結果よりも公聴会で暴露された疑惑について質問攻勢をするだろう。CNNのヘッドラインとニューヨークタイムズの1面トップも米朝首脳会談ではなく、コーエン被告の公聴会の記事が飾る可能性が高い。トランプ大統領としては想像するだけでも苦痛なシナリオだ。トランプ大統領の参謀は「下院を掌握した民主党がハノイ米朝首脳会談をつぶそうとして公聴会を意図的に会談の日に合わせた」とし、「韓国党式」の非難を始めた。しかし与野党が合意した議会日程をホワイトハウスが変えることはできない。
こうした状況でトランプ大統領が選択するカードを予測するのは難しくない。ハノイ会談で誰もが驚くような合意を引き出し、「コーエン被告公聴会波紋」を抑え込むことだ。「ついに北朝鮮の完全な非核化という約束を引き出した。歴代のどの大統領もできなかった成果」というような「一発」を狙うだろう。しかし金正恩委員長も馬鹿ではない。米国の国内政治状況を北朝鮮ほどよく把握している国も少ない。政権の安全と危機が米国の動向にかかっているため、それしか方法はない。
それでこのようなシナリオが最悪になる。▼金正恩委員長は「宣伝できる成果」を渇望するトランプ大統領の心情を十分に利用して「内容はスモールディールだが包装はビッグディール」の提案をし▼トランプ大統領はこれを受けて米国人に「大変な成果」と前面に出す結果のことだ。
その場合、北朝鮮は事実上、核保有国の地位を固めることになる。それによって最も大きな被害を受ける国は言うまでもなく韓国だ。韓国政府は銘記しなければいけない。南北関係の進展もよいが、国の安全保障に脅威となれば意味はない。トランプ大統領に「私心なく『ビッグディール』を進めることだけが北朝鮮を完全に非核化し、自身も政治危機から抜け出す近道」と説得する勇断を求める。
カン・チャンホ/論説委員
当時の洪準杓(ホン・ジュンピョ)韓国党代表は「トランプ大統領は外交もビジネスと考えるのか」というメッセージで米国の心を変えようとした。しかし米朝間で確定した首脳会談を韓国の野党が覆す能力はなかった。会談は予定通り開催され、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の抱擁、韓米合同軍事演習中断宣言など会談で出てきた結果は、韓国党に完全に不利なものだった。韓国党が6・13地方選挙で17カ所の広域団体長のうち15カ所で敗れ、歴代最悪の惨敗を喫したのは、前日に開かれた米朝首脳会談が間違いなく大きな影響を与えた。
ところが今回はトランプ大統領が韓国党の立場になった。本人がハノイで金正恩国務委員長と再会する27-28日、米国ではトランプ大統領の元顧問弁護士だったマイケル・コーエン被告の公聴会が開かれるからだ。ハノイと12時間の時差を置いてワシントンで開かれるこの公聴会はトランプ大統領を深刻な政治的窮地に追い込むかもしれない「核爆弾級イベント」だ。CNNなど米国メディアはハノイでの米朝首脳会談よりもコーエン被告の公聴会に関するニュースが多い。
トランプ大統領の下で12年間にわたり参謀として活動したコーエン被告は、トランプ陣営が大統領選挙過程でモスクワと内通して助けを受けたという、いわゆる「ロシアスキャンダル」の核心証人の一人だ。コーエン被告は昨年12月の1審裁判でトランプ陣営の選挙資金を流用してトランプ大統領のスキャンダルと関係がある女性2人に口止め料を支払い、議会で偽証した疑いで懲役3年を言い渡された。もともと懲役5、6年が予想されていた。しかしコーエン被告が減刑を受けるためにロバート・モラー特別検察官チームの捜査に積極的に協力するとして司法取引が成立し、3年刑を受けたと伝えられている。
コーエン被告はトランプ大統領に提起されたあらゆる疑惑を覆った。そのコーエン被告が公聴会で口を開けば、トランプ大統領のロシア内通疑惑のほか、財界人当時の脱税、政治資金法違反疑惑、トランプ財団の不透明な事業慣行など敏感なイシューが次々と出てくることも考えられる。
トランプ大統領の体はハノイで金正恩委員長と核談判をしながらも、心はワシントンに向かっているはずだ。同時に進行中の公聴会でコーエン被告が何を話をしているかが気になるしかない。すでにコーエン被告は20日、「米国国民は公聴会での私の話に期待してほしい」と述べ、大々的な暴露を予告した。
おそらく28日に2日間の米朝首脳会談を終えたトランプ大統領が翌日ワシントンのアンドルーズ空軍基地に到着すると、米国の記者は会談の結果よりも公聴会で暴露された疑惑について質問攻勢をするだろう。CNNのヘッドラインとニューヨークタイムズの1面トップも米朝首脳会談ではなく、コーエン被告の公聴会の記事が飾る可能性が高い。トランプ大統領としては想像するだけでも苦痛なシナリオだ。トランプ大統領の参謀は「下院を掌握した民主党がハノイ米朝首脳会談をつぶそうとして公聴会を意図的に会談の日に合わせた」とし、「韓国党式」の非難を始めた。しかし与野党が合意した議会日程をホワイトハウスが変えることはできない。
こうした状況でトランプ大統領が選択するカードを予測するのは難しくない。ハノイ会談で誰もが驚くような合意を引き出し、「コーエン被告公聴会波紋」を抑え込むことだ。「ついに北朝鮮の完全な非核化という約束を引き出した。歴代のどの大統領もできなかった成果」というような「一発」を狙うだろう。しかし金正恩委員長も馬鹿ではない。米国の国内政治状況を北朝鮮ほどよく把握している国も少ない。政権の安全と危機が米国の動向にかかっているため、それしか方法はない。
それでこのようなシナリオが最悪になる。▼金正恩委員長は「宣伝できる成果」を渇望するトランプ大統領の心情を十分に利用して「内容はスモールディールだが包装はビッグディール」の提案をし▼トランプ大統領はこれを受けて米国人に「大変な成果」と前面に出す結果のことだ。
その場合、北朝鮮は事実上、核保有国の地位を固めることになる。それによって最も大きな被害を受ける国は言うまでもなく韓国だ。韓国政府は銘記しなければいけない。南北関係の進展もよいが、国の安全保障に脅威となれば意味はない。トランプ大統領に「私心なく『ビッグディール』を進めることだけが北朝鮮を完全に非核化し、自身も政治危機から抜け出す近道」と説得する勇断を求める。
カン・チャンホ/論説委員
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