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【時視各角】「韓国は所得不平等が世界最高」というフェイクニュース

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が新年記者会見で「韓国は、経済的不平等が世界で最も深刻な国になった」と述べたが、私は仰天した。明らかなフェイクニュースを、それも大統領が自らの口から話すとは、にわかに信じることはできなかった。そうと思っていたら、各メディアがこの言葉の間違いを指摘した。だが、青瓦台(チョンワデ、大統領府)と文大統領からは今まで一言の説明もない。

まず、事実から確かめてみよう。所得不平等は一般的にジニ係数で比較する。数字が小さいほど格差は小さい。国連人間開発報告書2018年版は世界206カ国のうち比較可能な156カ国の資料を掲載している。韓国のジニ係数は0.316で同率28位だ。韓国よりも所得不平等が大きい国が少なくとも120カ国以上あるということだ。中国と米国は0.4を超え、非常に不公平な国だ。

また、所得の両極化比率を表すパルマ比率(所得占有率下位40に対する上位10%比率)はどうか。やはり数値が小さいほど両極化の程度が小さいが、韓国は1.2でドイツや日本と同じだ。156カ国中28~30位ぐらいだ。韓国より両極化が小さい国は27カ国しかないという意味だ。クォンタイル比率(所得占有率下位20%に対する上位20%比率)で確認しても韓国は40位ほどだ。どの基準を用いても韓国が世界最高の不平等国家という統計数字はない。


大統領の言葉は故意的・反復的であるという点でミスだった可能性がほぼない。大統領は野党代表時代から「深刻な不平等」(2016年1月20日の新年記者会見)と話してきた。大統領になった後も「所得と富の深刻な不平等」(2017年6・10抗争記念演説)、「所得不平等と両極化が深刻だった」(2018年9月1日の党政青全員会議)と述べ、相変わらずだった。事実の歪曲(わいきょく)が始まったのは約2カ月前からだ。大統領は国会の施政演説で「韓国は発展した国々の中で経済的不平等の程度が最も激しい国になった」(2018年11月1日)と述べた。「最も激しい国」は明らかに偽りだ。それでもこの時は「発展した国々の中で」という最小限の安全装置を施した。ところが先週は単刀直入に「大韓民国=世界最高の不平等国家」と釘をさした。

なぜこのように述べたのだろうか。推察はできる。大統領はその頃、支持率の急落に苦しめられていた。雇用惨事のようなみじめな経済成績が原因の大半を占めた。経済の失敗を否定してきた大統領としては「経済失敗フレーム」に対抗する強力な対応フレームが必要だったこともある。「世界最高不平等」フレームは甘い誘惑だ。理念だけに執着する参謀があおったのかもしれない。津波死亡者1368人を福島原発事故の死亡者として間違って話し、パニック映画に感動して脱原発を決心するなど事実と数字を細かく確認しない大統領の普段のスタイルがこのようにさせたのかもしれない。故意だろうがミスだろうが、大統領の誤った診断と現実認識は災難的結果につながりかねない。腹痛患者を胃がんIV期と診断して胃をすべて摘出してしまえば元に戻せないのと同じだ。こんなことが繰り返されれば大統領の言葉の信頼が落ちる。北朝鮮指導者の本心だと言って大統領が伝えても国民は疑ってかかるだろう。

李洛淵(イ・ナギョン)首相は昨年10月、「フェイクニュースを生産する者も流布する者も厳罰に処するべきだ」と述べた。大統領も「断固たる対処」を注文した。それなら大統領のフェイクニュースはどうするべきか。誰が処罰対象なのか。フェイクニュースを読んだ大統領なのか、それを書いた参謀や演説文担当者なのか、でなければ大統領の話をそのまま報道した流布者、メディアなのか。

実は私はフェイクニュース処罰に対して否定的な立場だった。BSE(牛海綿状脳症)・韓国哨戒艦「天安」・セウォル号関連の数多くのフェイクニュースが国を覆った時も、そのようなゴミを処罰する中で真実まで殺してはいけないと考えてきた。だが、この政府の処罰意志がそれほど強く、その中に大統領のフェイクニュースも含まれたのなら仕方ない。賛成するほかない。

イ・ジョンジェ/中央日報コラムニスト



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