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【コラム】市場の失敗より怖い政府の失敗=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
寡占・外部効果・公共財と情報の非対称のような現象は、長い間新古典派主流経済学の厄介な主題だった。「見えない手」の崇高さを自由競争市場と価格調節機能で理論化し、それを精巧な修理モデルに昇華したミクロ経済学の教科書で、これらは周辺的な市場の失敗の事例に置き換えられた。それが2008年に米国発の金融危機が地球村を襲い、新自由主義が非難を浴びたことでこれらの概念が学界と政策の中心部に進撃した。積極的市場介入論者らは市場の失敗を大義名分にした。

Jノミクス〔文在寅(ムン・ジェイン)政権の経済政策〕の20カ月は政府の失敗が市場の失敗よりさらに危険になるおそれがあるという恐怖感を呼び覚ました。ある民間経済研究所の政府規制事例集を読んでいて接した「強い政府の力」(ジョン・アイケンベリー)の概念に、膝を叩いた。

「強い政府は市場のあらゆる問題について政府が責任をとり解決すると信じている。(中略)問題を市場決定にまかせることを憚る。(中略)必然的に過去の政策公約にしばられることになるため表面的には強くみえても実際は特定の利益集団に捕われている場合が少なくない」。思い当たることがひとつやふたつではない。所得主導成長、脱原発、公共雇用81万件、最低賃金1万ウォン(約950円)、週52時間労働、経済民主化、利益共有制、積弊清算、全国民主労働組合総連盟、100%正規職転換…。


市場の失敗を正そうとして引き起こした政府の失敗の原因は市場の失敗ほど多様だ。政権の能力不足、支持層の顔色伺いと政治的妥協、利益集団の反発など、アイケンベリー教授は助言を忘れなかった。「誤った介入は撤回して市場に任せることこそ強い政府でなければし難しい勇断だ」。

政策失敗は予算浪費と非効率の他に敵味方を分け、階層葛藤を産む。善意を掲げた公約と政策が謹厳実直な説得・説明や綿密な準備なしに出され、疎外階層の凝縮された欲求を一度に刺激したからだ。ソウル・光化門(クァンファムン)は週末ごとにロウソク集会と太極旗(テグッキ、大韓民国の国旗)の戦場、労働者団体のデモの舞台になってしまった。最低賃金の急激な引き上げは弱者階層の零細商人や非正規職同士いがみ合うようにさせた。「庶民を泣かせる庶民政権」の不満の現場だ。

社会葛藤研究者のパク・ジュン博士(韓国行政研究員)は「不通・不服文化による社会的葛藤の費用が200兆ウォンほどだ」と推定する。韓国の昨年の予算の半分、そしてサムスン電子の昨年の売り上げに次ぐ規模だ。社会葛藤指数を見ると数年前に国家破綻直前まで行ったギリシャを凌駕する。

経済協力開発機構(OECD)を含む主要37カ国の中では最上位圏(6位)だ。「葛藤共和国」に他ならない。下から3番目のスウェーデンの水準に葛藤指数を下げれば1人当りの国民所得が13%ほど(約3000ドル、約32万円)増えるという分析も先月出た。

マラソンに喩えると、ことしは文在寅大統領の5年任期の折返し地点だ。時間がなさすぎる。積弊清算式の道徳政治、善意で包装されたアマチュア政策を一大刷新しなければ雇用絶壁、成長絶壁、人口絶壁の前に座り込むだろう。成功した大統領として残るのか、もう1つの積弊政権になるのかという分岐点だ。「ダメだったら仕方ない」というようなやり方の未熟な政策は嫌というほど経験した。最低賃金政策だけでも1年前に16.4%も引き上げ、その衝撃を権限させると言って先月26日まで計13回もの大小の補完策を乱発した。これほどのつぎはぎが必要だったのなら、ゆっくり進めるか最初からやらないべきだった。週52時間勤労時間短縮も同様だ。半年の処罰猶予後、更に3カ月延長した。このように少しずつ先送りするしかないのなら、なぜ急いで施行したのか。

利己的・独占的に流れやすい市場、硬直的・独善的属性が強い政府、現政権は市場との無謀な戦いを慎んで市場と手を握らなければならない。『資本主義4.0』(アナトール・カレツキー)の第3の道を助言する専門家が増えた。経済危機は市場の失敗・政府の失敗のどちらか一方のせいではなく市場と政府の不調和が主な原因ということだ。

規制緩和と財界を盛り上げることは財閥改革や経済民主化の後退ではない。最低賃金の引き上げと勤労時間短縮の速度を調節することもJノミクスの包容的成長と相反しないという覚醒の方が先だ。

洪承一(ホン・スンイル)/中央日報デザイン代表



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