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【時視各角】トランプが非核化を急いでいるだって?

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
人間はもともと自己中心的だ。自分の立場から世の中を見ようとする。北核問題も同じだ。自分たちの命がかかっていることで、他の人も千金のように感じていると信じてしまう。「ドナルド・トランプ米国大統領は11月の中間選挙で勝つために何とかして北核問題で具体的成果を出そうとする」という主張が真実のように出回っているのもそのためだ。かなりもっともらしく、「米国と北朝鮮がまもなくビッグディールをする公算が大きい」という論理もここから派生している。

果たしてそうだろうか。最近、ワシントンに行って戻ってきた韓半島(朝鮮半島)専門家は首を横に振る。「今回の中間選挙で北核は主なイシューではない」と断言する。有力世論調査会社が1000人に「今回の選挙イシューは何か」と尋ねたところ「北核」と答えた回答者はたった3人だけだったという。今年6月に実施された米NBC世論調査によると、今回の選挙の最大イシューは健康保険問題。続いて経済・銃器規制・税金・移民の順だった。すべて国内問題だ。地域で活動する上・下院議員を選ぶのに、北核イシューが分け入る隙がないということだ。

トランプが北核問題を利用するときがあるとすれば、それは自身の再選のときだと考えたほうがいい。年内に交渉を終えて来年に非核化手続きを終わらせた後、2020年大統領選挙時に北核解決を明らかにするというシナリオだ。今月5日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が韓国特使団に「トランプの最初の任期内に『完全な非核化』をする」と発言したことも、このためただならぬ響きがある。


北朝鮮はどうだろうか。平壌(ピョンヤン)で長く外交官をしていた中国の関係者に会ったことがある。彼は金正日(キム・ジョンイル)・金正恩と中国最高位層の会談にしばしば同席したことがあるという。2人を間近で見てどうだったかと聞くと、「2人とも20~30年先を見据えて話をしていた」という答えが返ってきた。金日成(キム・イルソン)は46年、金正日は17年間統治した。このような祖父と父親を持つ金正恩が短期間で結着をつけようとするわけがない。

このように米朝ともに息長く北核問題を扱う公算が大きいが、韓国政府だけが急いでいる。特に終戦宣言問題では息が上がり気味だ。「非核化からやれ」という米国と、先に終戦宣言を要求する北朝鮮の間の神経戦で、韓半島の時計が止まるや焦っているようだ。さらに文在寅(ムン・ジェイン)大統領は今月6日、「年内までに後戻りできないほどの進度に達するのが目標」とし「年内に終戦宣言を実現させたい」と述べた。

現政権が強く推し進めていることではあるが、終戦宣言問題は実は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時である2007年すでにまとまっている事案だ。当時の金万福(キム・マンボク)国家情報院長と白鍾天(ペク・ジョンチョン)青瓦台安保室長は終戦宣言から行い、その後から核廃棄に入ればいいと主張した。だが、宋旻淳(ソン・ミンスン)外交部長官はありったけの力を振り絞ってこれを防いだ。核廃棄を先にするべきところを終戦宣言からしようというのは、「馬車が馬を引っ張るようなもの」と言って反対した。一歩遅れて盧大統領は核廃棄なくして終戦宣言を含めた平和体制交渉はできないという現実に気づいた格好だ。盧大統領は結局、「終戦宣言に汲々とする必要はないから政権を超越した議題として推進せよ」と指示したという。

こうであるにもかかわらず、盧武鉉政権と脈を同じくする現政権が先に終戦宣言カードを再び墓から持ち出してきたのは一体どういうことなのか。今後、非核化をするという言葉だけを信じて、急いで終戦宣言からやってしまえば何か不覚を取るかもしれない。

今日から平壌(ピョンヤン)で南北首脳会談が開かれる。この席では北朝鮮に対する経済協力、終戦宣言など今後交渉カードとして使われるべき非常に重要な懸案が話し合いのテーブルに載せられることになるだろう。これらをその価値に見合わないまま気前よく差し出してしまえば、北朝鮮を動かすテコを失うことになる。錯覚と焦りで軽はずみな行動を取ってしまえば、我々の命がかかった非核化がうまくいかなくなる可能性があることを、文大統領と随行員は肝に銘じなければならない。

ナム・ジョンホ/論説委員



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