北朝鮮の歌「一気に」は金正恩(キム・ジョンウン)時代を象徴している。2012年に設立された牡丹峰(モランボン)楽団の代表曲だ。軽快な電子楽器のリズムで「一気に」という歌詞を繰り返す。ミサイル発射や核実験後の祝賀公演でこの楽団が必ず演奏する曲だ。この曲が流れると観客は手拍子をとり、席を立って踊ったりもする。「一気に」は金正恩国務委員長が執権後に追求してきた「一気に飛躍」の意志が反映されているという。「一気に飛躍」とは、社会主義体制をそのまま維持しながら科学技術を通じて速いペースで経済難を克服するというものだ。1年間に数十万人が餓死することもあった過去を終えて希望の未来を提示するという意志が込められたという評価だ。
金正恩が執権後の最初の公開演説(2012年4月15日)で「市民が二度と苦しむことがないようにする」と述べた点はこれとつながっている。3月末の訪中当時、中国版シリコンバレーの中関村と中国科学院を訪問したのも同じ脈絡とみられる。金正恩は執権以降、「自らの地に足をつけて目は世界に向けよう」というスローガンを掲げ、コンピューター数値制御(CNC)分野に力を注いできた。韓国政府の当局者は「金正恩はよい生活をする社会を作るという趣旨で先代との差別化を図るようだ」と話した。
金正恩が執権してから6年間、北朝鮮は外形上の変化を見せている。「革命の首都」平壌(ピョンヤン)は目を引く。あちこちに西洋式のレストランと水族館、ウォーターパークが登場した。北朝鮮版新都市の「科学者通り」「黎明通り」も造成された。灰色の都市が蛍光色に変わり、暗黒天地だった夜道にも街灯とネオンが設置された。携帯電話の使用者も2016年末基準で約360万6000人(統計庁)、現在は500万人近いという。
最近北朝鮮を訪問した関係者は「電力事情や車の数、食べ物、街の変化など外形的に平壌は金正日(キム・ジョンイル)時代より良くなった」と伝えた。北朝鮮が「コーヒーミックス」を生産し、たばこや焼酎など嗜好品の質と包装が向上したのも、食糧を心配しながら飢えて死ぬ時代から抜け出したという傍証というのが、北朝鮮専門家らの分析だ。韓国銀行(韓銀)が推算した北朝鮮住民1人あたり国民総所得(GNI)は2011年の金正恩執権以前は1000ドルを下回っていた。しかし2011年から1200ドル(2016年に韓国は3万ドル)を超えた。市場の拡大は金正恩時代のもう一つの特徴だ。金正日時代、市場は制限的に許された。しかし今は全国的に500カ所以上の常設市場が運営されていると、当局は把握している。匿名を求めた脱北者は「労働党課長級の月給が4000ウォンだが、4人家族が生活するには厳しい」とし「市場での流通マージンで不足部分を解消していて、当局も市場での取引活動を許している」と説明した。
実際、北朝鮮の世帯収入の70-90%が市場で発生するという分析もある。過去には認められなかった市場が北朝鮮経済の酸素呼吸器の役割をしているのだ。さらに金正恩時代には90年代後半のような大規模な自然災害がなかった。自救策も見つけた。企業の独立採算制を拡大し、差別賃金制、支配人責任経営制を導入した。自律と分権が生産性の向上に一部寄与したという評価が出ている。
食べていく心配は減ったが、経済は国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の壁にぶつかった。2016年1月以降3回の核実験と相次ぐミサイル試験発射に対する4回の対北朝鮮制裁決議は北朝鮮の一般経済を狙った。過去6回の大量破壊兵器(WMD)移転統制とは次元が違った。主な外貨収入源だった無煙炭など鉱物の輸出がふさがり、海外労働者の派遣や海外飲食店の運営も中断した。制裁は執権層の財布を空にし、住民に苦痛を与え始めた。北朝鮮の関係者らが「経済制裁の影響が出始めた」と吐露する理由だ。実際、韓国貿易協会(KITA)が中国税関統計を調べたところ、昨年の中朝貿易額は金正恩体制に入って最も少ない49億7900万ドルとなった。前年(58億2600万ドル)に比べて14.5%減少した。
チョン・ヒョンゴン対外経済政策研究院北東アジア経済本部長は「無煙炭は北の対中輸出の45%を占めるほど主要な外貨収入品目」とし「国連安保理決議(2321号)に基づいて昨年3月から輸出が急激に減少し、前年と比較すると66%(4億ドル)減少した」と分析した。
何よりも昨年9月の北朝鮮の6回目の核実験による対北朝鮮制裁の余波は大きかった。安保理が鉱物資源のほか繊維・水産物までも禁止し、10-12月期の対中輸出は前年同期比で61-83%減少した。北朝鮮は貿易の大半を中国に依存しているだけに、この状況が続けば貿易量は今後さらに減少すると予想される。「一気に飛躍」どころか、1990年代半ばの苦難の行軍が再現されるという見方も出ている。
チン・ヒグァン仁済大統一学部教授は「徐々に対北制裁の効果が北の社会に表れている」とし「市場が活性化し、資本主義の要素が拡散した状況で経済が後退すれば、金正恩のリーダーシップにも致命打として作用するだろう」と述べた。パイが拡大した市場の逆襲も考えられるということだ。
金正恩がこの2年間、大規模な労力を動員して「速度戦」を展開したのはこのためとみられる。北朝鮮は2016年に「70日戦闘」と「200日戦闘」を展開した。事実上、年中、労働力と資本を搾取した。昨年は「万里馬運動」を強調した。韓国戦争(朝鮮戦争)直後の復旧事業のために大規模な労働力を動員した「千里馬運動」に匹敵するキャンペーンだ。速度戦は一時的に生産を増やすことができても、結局は資源配分の歪曲をもたらすものだ。北朝鮮経済は今年、多くの面で分岐点を迎えている。金正恩が「万能の宝剣」と位置づけた核武力を担保に交渉テーブルに出てきたのは、結局、経済の足かせになっているためという分析が多い。金正恩の戦略路線の核武力・経済建設並進路線はいま岐路に立っている。
金正恩が執権後の最初の公開演説(2012年4月15日)で「市民が二度と苦しむことがないようにする」と述べた点はこれとつながっている。3月末の訪中当時、中国版シリコンバレーの中関村と中国科学院を訪問したのも同じ脈絡とみられる。金正恩は執権以降、「自らの地に足をつけて目は世界に向けよう」というスローガンを掲げ、コンピューター数値制御(CNC)分野に力を注いできた。韓国政府の当局者は「金正恩はよい生活をする社会を作るという趣旨で先代との差別化を図るようだ」と話した。
金正恩が執権してから6年間、北朝鮮は外形上の変化を見せている。「革命の首都」平壌(ピョンヤン)は目を引く。あちこちに西洋式のレストランと水族館、ウォーターパークが登場した。北朝鮮版新都市の「科学者通り」「黎明通り」も造成された。灰色の都市が蛍光色に変わり、暗黒天地だった夜道にも街灯とネオンが設置された。携帯電話の使用者も2016年末基準で約360万6000人(統計庁)、現在は500万人近いという。
最近北朝鮮を訪問した関係者は「電力事情や車の数、食べ物、街の変化など外形的に平壌は金正日(キム・ジョンイル)時代より良くなった」と伝えた。北朝鮮が「コーヒーミックス」を生産し、たばこや焼酎など嗜好品の質と包装が向上したのも、食糧を心配しながら飢えて死ぬ時代から抜け出したという傍証というのが、北朝鮮専門家らの分析だ。韓国銀行(韓銀)が推算した北朝鮮住民1人あたり国民総所得(GNI)は2011年の金正恩執権以前は1000ドルを下回っていた。しかし2011年から1200ドル(2016年に韓国は3万ドル)を超えた。市場の拡大は金正恩時代のもう一つの特徴だ。金正日時代、市場は制限的に許された。しかし今は全国的に500カ所以上の常設市場が運営されていると、当局は把握している。匿名を求めた脱北者は「労働党課長級の月給が4000ウォンだが、4人家族が生活するには厳しい」とし「市場での流通マージンで不足部分を解消していて、当局も市場での取引活動を許している」と説明した。
実際、北朝鮮の世帯収入の70-90%が市場で発生するという分析もある。過去には認められなかった市場が北朝鮮経済の酸素呼吸器の役割をしているのだ。さらに金正恩時代には90年代後半のような大規模な自然災害がなかった。自救策も見つけた。企業の独立採算制を拡大し、差別賃金制、支配人責任経営制を導入した。自律と分権が生産性の向上に一部寄与したという評価が出ている。
食べていく心配は減ったが、経済は国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の壁にぶつかった。2016年1月以降3回の核実験と相次ぐミサイル試験発射に対する4回の対北朝鮮制裁決議は北朝鮮の一般経済を狙った。過去6回の大量破壊兵器(WMD)移転統制とは次元が違った。主な外貨収入源だった無煙炭など鉱物の輸出がふさがり、海外労働者の派遣や海外飲食店の運営も中断した。制裁は執権層の財布を空にし、住民に苦痛を与え始めた。北朝鮮の関係者らが「経済制裁の影響が出始めた」と吐露する理由だ。実際、韓国貿易協会(KITA)が中国税関統計を調べたところ、昨年の中朝貿易額は金正恩体制に入って最も少ない49億7900万ドルとなった。前年(58億2600万ドル)に比べて14.5%減少した。
チョン・ヒョンゴン対外経済政策研究院北東アジア経済本部長は「無煙炭は北の対中輸出の45%を占めるほど主要な外貨収入品目」とし「国連安保理決議(2321号)に基づいて昨年3月から輸出が急激に減少し、前年と比較すると66%(4億ドル)減少した」と分析した。
何よりも昨年9月の北朝鮮の6回目の核実験による対北朝鮮制裁の余波は大きかった。安保理が鉱物資源のほか繊維・水産物までも禁止し、10-12月期の対中輸出は前年同期比で61-83%減少した。北朝鮮は貿易の大半を中国に依存しているだけに、この状況が続けば貿易量は今後さらに減少すると予想される。「一気に飛躍」どころか、1990年代半ばの苦難の行軍が再現されるという見方も出ている。
チン・ヒグァン仁済大統一学部教授は「徐々に対北制裁の効果が北の社会に表れている」とし「市場が活性化し、資本主義の要素が拡散した状況で経済が後退すれば、金正恩のリーダーシップにも致命打として作用するだろう」と述べた。パイが拡大した市場の逆襲も考えられるということだ。
金正恩がこの2年間、大規模な労力を動員して「速度戦」を展開したのはこのためとみられる。北朝鮮は2016年に「70日戦闘」と「200日戦闘」を展開した。事実上、年中、労働力と資本を搾取した。昨年は「万里馬運動」を強調した。韓国戦争(朝鮮戦争)直後の復旧事業のために大規模な労働力を動員した「千里馬運動」に匹敵するキャンペーンだ。速度戦は一時的に生産を増やすことができても、結局は資源配分の歪曲をもたらすものだ。北朝鮮経済は今年、多くの面で分岐点を迎えている。金正恩が「万能の宝剣」と位置づけた核武力を担保に交渉テーブルに出てきたのは、結局、経済の足かせになっているためという分析が多い。金正恩の戦略路線の核武力・経済建設並進路線はいま岐路に立っている。
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