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【コラム】今年の「シーンスティーラー」、金正恩(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

【コラム】今年の「シーンスティーラー」、金正恩

映画やテレビドラマで抜群の演技力や独特のキャラクターで主演以上の注目を浴びた助演をシーンスティーラー(scene stealer)という。世界各国の指導者のうち「今年のシーンスティーラー」を選ぶのならこれ以上待つ理由はない。2018年の受賞者はすでに決まった。北朝鮮の最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)だ。彼は最後の瞬間にスライディングするように駆け込み、他人の祭りを自分の祭りにする驚くべき技量を見せた。

「神の一手」は金与正(キム・ヨジョン)だ。金正恩は平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック(五輪)の開幕に合わせて自分の妹を急派する「サプライズショー」で人々の注目を引くのに成功した。金与正の一挙手一投足に向かったメディアの関心はアイドルスターもうらやましがるほどだった。2泊3日の短い日程で金与正は大統領、首相、国家情報院長、青瓦台(チョンワデ、大統領府)参謀など南側政府の要人に幅広く会った。文在寅大統領とは4回も同席した。趙明均(チョ・ミョンギュン)統一部長官は専属案内員のような役割をした。北朝鮮が平昌五輪をさらった(hijack)という言葉が出てくる理由だ。

血統が能力より優先される北朝鮮「王朝」体制の特性を考えると、政府が国賓以上の破格待遇で金与正を歓待したことについては何とも言いがたい。同じ「白頭(ペクトゥ)血統」を持って生まれた金与正ほど金正恩に直接話せる人物は北朝鮮にいない。金与正は特使の資格で金正恩の親書と口頭メッセージを文大統領に伝達し、「統一の新たな幕を開く主役になり、後世に残る足跡を刻まれるよう願っています」と分不相応な言葉まで述べた。金正恩の妹という威勢があるからこそ可能なことだ。


金与正は兄の金正恩とスイス・ベルンで数年間、幼少時代を過ごした。したがって国外のことを知らないはずはない。「ソウルは初めてだが、そんな感じがしない」と話したのを見ると、韓国事情についてもある程度は知っていると見るべきだろう。たとえ短い時間ではあったが、韓国で見聞きして感じたことを率直に金正恩に伝えることが歓待に報いることだ。今回の訪問が、核やミサイルよりも重要なものが何かをじっくり考える契機になればさらによい。自分なりに何かを感じて、「お兄さん、これは間違っている。私たちも何か変えてみましょう」と伝えればなおさら望ましいことだ。

金正恩が電撃的に南北首脳会談を呼びかけたことで文大統領は薄氷の上に立つことになった。金正恩が差し出したものが「毒入りリンゴ」ということを文大統領も知っているため「条件を整えて実現させよう」と答えたのだろう。条件が整わなければ会えないかもしれないということだ。何よりも米国を意識したはずだ。五輪開会式に出席したペンス米副大統領は南北関係の進展に警戒心を露骨に表した。南北の選手が共同入場する時に起立して拍手する基本的なエチケットさえも無視した。米国の不信は文大統領を越えなければならない最初の障害物だ。



【コラム】今年の「シーンスティーラー」、金正恩(2)


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