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【時視各角】文大統領周辺の危険な北核観

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
北朝鮮の核・ミサイルは韓国を狙ったものだ。こうした当然の認識は、驚くことに、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の周囲のかつて主体思想派だった参謀や南北首脳会談経験勢力からはあまり見られない。北核に対処するために韓国に戦術核を置くべきだという主張は青瓦台(チョンワデ、大統領府)では全く受け入れられない。北核は決して韓国攻撃や脅迫用でないというのが、この人たちの支配的な考え方だ。

大統領周辺の人たちは北朝鮮の戦略核が米国を狙ったものと考えてきた。北核は米国から生存するために自衛権レベルで開発したものであり、韓国を攻撃する意図はないという主張だ。筆者が「北核は韓国を侵略したり支配するための目的であり、米国の支援を遮断するための手段」と話すと、「何を言うのか」と理解しがたい表情を見せたりする。

こうした状況であるため、青瓦台や共に民主党の言動からは被害者の切迫感より、外から眺めるような心理が感じられるのはおかしなことではない。彼らは緊張がピークに到達する年末ごろ、朝米交渉が劇的に妥結し、北核問題が平和的に解決するというシナリオを提示したりもする。戦争さえ防げばよく、議論の過程で韓国が排除されることは関係ないという態度も感知される。彼らは概して朝米間の交渉の末、北核凍結、大陸間弾道ミサイル(ICBM)廃棄、国交正常化に合意すると予想している。北核妥結シナリオの中でぞっとするのは、言葉では北核廃棄を主張しながらも交渉の結果として核凍結になればやむを得ないという無感覚だ。ここで核凍結は交渉の入口でなく終着点だ。結局、北核と共存しようということだ。韓国政府は朝米交渉に介入する余地が少ないとしても、核凍結条項だけは阻止しなければいけないだろう。


金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長は核を開発していた父とは違う。彼は核を完成させた主人公だ。開発中の核戦力は凍結すれば使い道がないが、完成した核戦力は凍結しても意味がない。その気になればいつでも取り出して使用できる。完成した核で凍結は言葉遊びにすぎない。この場合、核凍結は核認定となる。米国も自国のことで精一杯だ。核搭載ミサイルが太平洋を渡って自国の領土に飛んでくるのを防ぐのが朝米交渉の目標だ。完成した核爆弾が東アジアの脅迫者として登場する程度なら容認する可能性がある。

ここで私は韓国の執権層と普通の人の間に深刻な認識の亀裂が生じているという不吉さを感じる。執権勢力の核心からは北核の脅威から韓国を守ろうという意志や決意が見られないからだ。彼らは最初から北核の脅威性や悪意性を認めようとしない。それよりも北朝鮮に向けた米国の攻撃性を問題視する。北朝鮮の核武装が問題なのか、米国の攻撃性が問題なのか。数日前のギャラップ世論調査は、民主党支持層ですら北核に対応した核武装に賛成するという回答が50%を超えた。大半の国民が憂慮する北核の脅威性を軽視し、米国の問題性ばかり見る青瓦台・民主党の集団思考は、韓国社会に深刻な葛藤をもたらすおそれがある。

執権勢力が目指すシナリオ通りに状況が展開する可能性もある。しかし朝米協定が結ばれるとしても、両当事者間の排他的交渉の結果という点を忘れてはいけない。すでに韓国政府の対話論は金正恩委員長の嘲弄の対象となり、融和論はトランプ大統領のごみ箱に押し込まれた。韓国は何もできずあちこち眺めながら分別なく振る舞ったという声を聞かないようにしなければいけない。そうであるほど朝米交渉に韓国の利益や観点を反映させるために死力を尽くさなければいけないだろう。

チョン・ヨンギ/中央日報コラムニスト



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