トランプ米大統領の口から「ＴＨＡＡＤ（高高度防衛ミサイル）請求書」発言が出る数日前、ホワイトハウス周辺ではもう一つの「怪談」があった。

「カール・ビンソン」請求書。発信者はトランプ大統領、受信者は文在寅（ムン・ジェイン）次期大統領。内容を整理するとこうだ。

「原子力空母『カール・ビンソン』が予定を変更して韓半島（朝鮮半島）に配備された。空母打撃群の構成はこうだ。原子力潜水艦２隻を先頭にイージス駆逐艦『ウェイン・Ｅ・マイヤー』『マイケル・マーフィー』、その後ろに空母『カール・ビンソン』、そして誘導ミサイル巡洋艦が護衛した。韓半島での運営期間は約１カ月。以下、請求書内訳：『カール・ビンソン』空母運営費＝３７５億ウォン（約３７億円）、潜水艦２隻＝５０億ウォン、駆逐艦２隻＝５０億ウォン、巡洋艦１隻＝３０億ウォン。１カ月間の運営費５０５億ウォンを韓国政府に請求する」。


ＴＨＡＡＤ配備も「カール・ビンソン」航路変更も韓国が要請したのではない。米国が要請して決めたことだ。しかしトランプ大統領にはそのように考えない。「トランプの頭」の回路は徹底的に恩恵を受けた者の負担に合わせられている。価値よりも利益だ。いくらＴＨＡＡＤ契約書を見せても、韓米ともに恩恵を受けると主張しても、意味はない。

もちろん我々がこうした言葉に興奮する必要はない。トランプ大統領の口やツイッターから出た外交発言のうちまともに実現したものはない。マンスフィールド財団のフランク・ジャヌージ代表は「ひとまず無視すればよい。彼はある問題について何かを悟って学べばすべて立場を変えた」と助言する。実際、トランプ大統領の口からは、中国を為替操作国に指定して関税を４５％払わせるという言葉が消えた。「一つの中国」政策を見直すと言っていたが、今は台湾総統の電話も受けない。対日貿易赤字解消と防衛費分担金増加の主張は完全に消えた。「使い道のない組織」と話していた北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）は「強い同盟」に変わった。

しかし我々が注目するべきことは、トランプ大統領がすんなりと変わったわけではないという点だ。それでもトランプ大統領は閣僚や専門家の助言に耳を傾ける人でない。先日、ホワイトハウスの関係者が話したエピソードの一つ。ティラーソン国務長官がホワイトハウスに入ってトランプ大統領にトルコ関連のブリーフィングをした。「トルコがロシアに近づいている。何か措置を講じなければいけない」という内容だった。しばらく聞いていたトランプ大統領は３分も経たないうちに話を遮り、このように話したという。「ところであなたはエルドアン・トルコ大統領がなぜあれほどパワーがあるのか知っているか。それはツイッターのためだ。クーデターを鎮圧したのもツイッターをうまく活用したからだ」。この時からトランプ大統領の「ツイッター礼賛」講義がブリーフィングの最後まで続いたという。



【時視各角】韓国は「トランプの口」を塞げるのか（２）