韓国戦争(朝鮮戦争)挑発3カ月前の1950年3月末、北朝鮮内閣首相の金日成(キム・イルソン)は特別機でモスクワに向かった。副首相で外相を兼ねていた朴憲永(パク・ホンヨン)が随行した。スターリンソ連共産党書記長に会った金日成は南侵計画を持ちだした。すでに同年初め、「共和国南半部の人民は私を信頼し、我々の武装力に期待している。南朝鮮解放のための攻撃にソ連側の指示と許可が必要だ」と通知していた。「3日あれば戦争に決着がつくだろう」として懇請する金日成を手伝って朴憲永が乗り出した。「戦争が始まれば南朝鮮にいる約20万人の南労党(南朝鮮労働党)員が大規模な暴動を起こし、我々を助けるだろう」という話だった。
しかし現実は違った。党首の朴憲永が越北し、新しい指導部を率いた金三龍(キム・サムニョン)・李舟河(イ・ジュハ)までが捕まり、南労党はすでに滅裂状態だった。「南半部解放」を成し遂げられなかった金日成は終戦直後の1953年8月、南労党系の粛清を名分に朴憲永を逮捕し、2年後に反党・宗派とスパイ容疑を被せて処刑した。金日成は北朝鮮軍創設15周年行事が開かれた1968年2月、「朴憲永は嘘つきだった」と批判して不満を爆発させた。しかし後悔にしかならなかった。朴憲永の誤った情勢判断とこれを過信した金日成の過ちで韓半島は同族間争いの大惨禍が発生し、その傷はまだ消えていない。
韓国戦争から66年の今年、北朝鮮にはもう一人の金日成が君臨している。祖-父-孫にわたる3代世襲で権力を譲り受けた金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長だ。金正恩執権5年は祖父の統治スタイルをそのまま真似て権力基盤を固める時期だった。不足するカリスマを満たすことにも集中した。ヘアスタイルと眼鏡はもちろん体型、演説スタイルまで細かく演出する。金正日(キム・ジョンイル)総書記を飛び越えたような姿からは隔世遺伝という言葉が思い浮かぶ。
そのためか。大胆な金正恩の行動からは不吉な気運が感知される。22日朝、金委員長は江原道元山(ウォンサン)でムスダン(BM-25)中距離弾道ミサイル(IRBM)試験発射を参観した。4月からの4回の失敗を乗り越えた、まさに「4転5起」の結果だ。興奮した金正恩は「敵を常時威嚇できる強力な攻撃手段を持たなければいけない。先制核攻撃能力を持続的に拡大強化しろ」と指示したというのが、官営宣伝メディアの伝言だ。元山から3500キロ離れた米国領グアムのアンダーソン基地を射程圏とした点を意識したかのように、「太平洋作戦地帯内の米国の奴らを全面的かつ現実的に攻撃できる確実な能力を持った」とも言及した。金正恩は3月、核弾頭を目の前に置いて撮った写真を労働新聞1面に公開したことがある。今回は米国を狙った投発手段まで保有したことを宣言したのだ。
金正恩政権の対南態度はさらに露骨だ。1月の4回目の核実験の後、「ソウル火の海」暴言などを続けてきた北朝鮮は突然、対話モードに転じた。先月初めの労働党第7回大会で金正恩が提案した「南北軍事会談」が契機になった。韓国政府が誠意を疑う反応を見せると、平壌(ピョンヤン)側はまた挑発モードで牙をむいた。いわゆる「政府・政党・団体共同声明」を通じて自分たちの要求を聞き入れろと脅迫した。そうでなければ「正義の祖国統一大戦にいくしかない」と主張した。「統一大戦」とは金正恩がよく使う表現で、第2の韓国戦争を意味する。あたかも大韓民国の運命を自分たちが握っているように空威張りしているのだ。
【コラム】北朝鮮の金正恩の錯覚が不安な理由(2)
しかし現実は違った。党首の朴憲永が越北し、新しい指導部を率いた金三龍(キム・サムニョン)・李舟河(イ・ジュハ)までが捕まり、南労党はすでに滅裂状態だった。「南半部解放」を成し遂げられなかった金日成は終戦直後の1953年8月、南労党系の粛清を名分に朴憲永を逮捕し、2年後に反党・宗派とスパイ容疑を被せて処刑した。金日成は北朝鮮軍創設15周年行事が開かれた1968年2月、「朴憲永は嘘つきだった」と批判して不満を爆発させた。しかし後悔にしかならなかった。朴憲永の誤った情勢判断とこれを過信した金日成の過ちで韓半島は同族間争いの大惨禍が発生し、その傷はまだ消えていない。
韓国戦争から66年の今年、北朝鮮にはもう一人の金日成が君臨している。祖-父-孫にわたる3代世襲で権力を譲り受けた金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長だ。金正恩執権5年は祖父の統治スタイルをそのまま真似て権力基盤を固める時期だった。不足するカリスマを満たすことにも集中した。ヘアスタイルと眼鏡はもちろん体型、演説スタイルまで細かく演出する。金正日(キム・ジョンイル)総書記を飛び越えたような姿からは隔世遺伝という言葉が思い浮かぶ。
そのためか。大胆な金正恩の行動からは不吉な気運が感知される。22日朝、金委員長は江原道元山(ウォンサン)でムスダン(BM-25)中距離弾道ミサイル(IRBM)試験発射を参観した。4月からの4回の失敗を乗り越えた、まさに「4転5起」の結果だ。興奮した金正恩は「敵を常時威嚇できる強力な攻撃手段を持たなければいけない。先制核攻撃能力を持続的に拡大強化しろ」と指示したというのが、官営宣伝メディアの伝言だ。元山から3500キロ離れた米国領グアムのアンダーソン基地を射程圏とした点を意識したかのように、「太平洋作戦地帯内の米国の奴らを全面的かつ現実的に攻撃できる確実な能力を持った」とも言及した。金正恩は3月、核弾頭を目の前に置いて撮った写真を労働新聞1面に公開したことがある。今回は米国を狙った投発手段まで保有したことを宣言したのだ。
金正恩政権の対南態度はさらに露骨だ。1月の4回目の核実験の後、「ソウル火の海」暴言などを続けてきた北朝鮮は突然、対話モードに転じた。先月初めの労働党第7回大会で金正恩が提案した「南北軍事会談」が契機になった。韓国政府が誠意を疑う反応を見せると、平壌(ピョンヤン)側はまた挑発モードで牙をむいた。いわゆる「政府・政党・団体共同声明」を通じて自分たちの要求を聞き入れろと脅迫した。そうでなければ「正義の祖国統一大戦にいくしかない」と主張した。「統一大戦」とは金正恩がよく使う表現で、第2の韓国戦争を意味する。あたかも大韓民国の運命を自分たちが握っているように空威張りしているのだ。
【コラム】北朝鮮の金正恩の錯覚が不安な理由(2)
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