金鍾仁（主キム・ジョンイン）の「共に民主党」代表職辞退問題が総選挙政局の突発変数に浮上した。イシューの登場は突発的だが根は深く広い。金氏が退けば今回の選挙の時代精神である古い進歩覇権の清算は水の泡のように消えるだろう。

金鍾仁問題は彼が出した比例代表名簿案を親盧・親文在寅（ムン・ジェイン）、運動圏集団が支配する５００人余りの中央委員会が拒否することで大きくなった。金氏が自ら比例代表順位２番に入ったことで、党憲・党規上、違反素地があるいわゆる「仕切り公認」（上位からＡ・Ｂ・Ｃ３グループに分けて比例代表順位を決める方式）が拒否権行使の名分になった。「共に民主」の支援勢力である民主弁護士会のイ・ジェファ司法委員長がＳＮＳに掲載した「金鍾仁の老欲が総選挙を台無しにした」という攻撃、文在寅勢力の中心部にいるチョ・グク・ソウル大教授の「権力行使を自制する方ではない」という人格的な冒とく発言が事態を悪化させた。結局、中央委は集団的投票の力で自分たちの意向を貫徹させた。中央委は金氏が望んでいた２番席は認めたが、代わりに後順位にあった親文・運動圏出身を前面に大挙移動させた。親盧・親文主流がしばらく頭を下げていただけで、その気になればいつでも再起して集団覇権を行使する可能性があることを示したといえる。金氏は昨日、「強欲な老人だと言って私に恥をかかせたことは容認できない」として代表職から退こうとした。地方から急きょ上京した文氏は金氏に会って「厳しい時期に非常対策委を引き受け、党を再生されたではないか。総選挙の勝利のために最後まで締めくくってほしい」と懇請した。非常対策委は金氏に「しっかりとバックアップできず申し訳ない」と謝ったという。

今回の金鍾仁問題で明らかになったのは、金氏の政治実験が進歩覇権勢力によってあっという間に覆ることがある点だ。金鍾仁はやはり「匹馬単騎（一人で馬に乗っていく）」であり、親盧・親文主流の総選挙勝利のための道具にすぎないという指摘を避けられない。金氏がこれまで地方区の公認から運動圏の人々を外すことができたのも、覇権勢力が選挙勝利のためにしばらく譲歩したためであるようだ。彼らの力は強くて健在だ。親盧覇権文化は自分たちだけの正義を独占する独善、理念過剰の非現実的な政策路線、世の中をこちらとあちらに分ける陣営論理、常識の世界では受けれがたいような極端言動を見せてきた。過去４年間、第１９代国会を亡ぼし国家の前進を遮った主犯として認識されている。このため、野党圏は２つの政党に分裂して文氏は自ら退き、実用的戦略家である金氏を三顧の礼をもって連れてくるしかなかった。金氏をスカウトしたのも文氏だが、金氏を追い詰めた「文在寅集団」を武装解除させたのも文氏だ。結局、文氏は金氏に「病気」を与え「薬」をあげたことになる。文氏の真意がどこにあるのかが気になるところだ。今回の事態はどのようにまとめていくつもりなのか分からない。だが、総選挙直後、文在寅勢力は文氏の個人的な意志とは関係なく、金鍾仁を兎死狗烹（厳しい時期に活躍した人が、事態が落ち着いたあとでお払い箱になること）とする可能性がある。それが過去、進歩覇権勢力が繰り返してきた形態だった。