前方を見通すのが難しい荒波に包まれた韓半島(朝鮮半島)の情勢を誰よりも案じる目で眺めている米国人がいる。米中央情報局(CIA)韓国支部長、駐韓米大使、コリアソサエティー理事長として韓国と長年かかわってきたドナルド・グレッグ太平洋世紀研究所(PCI)理事長(88)だ。先月25日に米国ロサンゼルスで開かれた「2016年PCIビルディング・ブリッジズ・アワード」の授賞式に参加した彼に会って、最近の韓半島情勢について尋ねた。
--韓半島情勢が悪化の一途にある。一次的な責任はもちろん北朝鮮にあるが、それが全てではないようだ。現況をどのようにみているのかまず気になる。
「韓半島問題に対して想像力のある思考をする人が誰もいない。誰もが強硬な思考の枠組みに閉じ込められている。破局に帰結することがいっそ自分の利益になると考える人々がいるのではないかとさえ思う時がある。今、各自が取っている一連の措置で現象を打開できると期待している人は誰もいないだろう。コルディウスの結び目やルービックキューブを手に、どうすることもできなくなっている姿だ」
--金正恩の無謀な挑発からすべてが始まった。
「認めたくない人が多いが今、自分の手に握ったカードを最もうまく駆使している人は金正恩だ。しかし金正恩も重大な失敗を犯した。あまりにも突き進んでいる。最近、平壌(ピョンヤン)に行ってきたさまざまな米国人の証言によれば社会的・経済的に北朝鮮が非常に活気を帯びているという。農民が作物の3分の1を直接処分できるようにするなど金正恩は北朝鮮の経済状況を改善するためにそれなりに肯定的な措置を取っている。だが4次核実験をして、すぐに続けて長距離ミサイル発射まで行ったことは明らかに常軌を逸したものだ。若い年齢にもかかわらず金正恩は権力を強固にすることには成功したが、ある意味で彼は『井の中の蛙』に過ぎない。彼はほかの種類の声を聞く必要がある。批判者ではなく助言者として彼に率直な話をする外部の人間が必要だ」
--「率直な仲裁者(honest broker)」ということか。
「まさにそれだ。ところで今そのような役割をする人が誰もいない。北朝鮮問題をめぐって米国と中国は『ブレイムゲーム(blame game)』をしている。米国は中国のせいにして、中国は米国のせいにする。金正恩は誰よりもこうした事情をよく分かっている。金正恩は賢いが、自身が持つパイ以上で『オーバープレー(overplay)』をする失敗を犯した。誰かが彼のところに行って率直に話さなければならない」
--どんな話をするということか。
「例えばこんな話だ。『さあ、あなたが国の状態が良くなるようにしようと努めている点は認める。だが核問題に進展がなければ、そのような努力だけでは限界がある。今すぐに核兵器を放棄しろというのではない。米国との間に一定の信頼が積み重なるまで非核化問題は後回しにしても、不拡散問題については米国との対話にすぐに着手する必要がある…』。信じるに足る外部の仲裁者が金正恩に会って、こうした話をしなければならない」
--誰がそのような役割を果たせる適任者だと思うか。
「私は韓国と北朝鮮を行き来しながら双方についてよく知っているロシアの人と興味深い対話をしたことがある。彼に金正恩が誰となら喜んで話をすると思うかと尋ねたところ『とても良い質問だ』としながら元米大統領のジミー・カーターとビル・クリントンを挙げた。私は仲裁外交で優れた技量を発揮したカナダに注目する必要があると考えている。カナダの元首相だったレスター・ピアソンは、スエズ運河を国有化したエジプトをフランスと英国が攻撃して触発された『スエズ危機』当時に積極的な仲裁に乗り出した功労でノーベル平和賞を受けた。テヘラン米大使館人質事件の時はカナダの外交官たちが中間で役割も果たした。当時首相だったピエール・トルドーは優れた外交官でもあった。彼の息子が現在のカナダ首相であるジャスティン・トルドーだ。金正恩は30代初め、トルドーは40代初めなので互いに話が通じるかもしれない。新しい思考が必要な時だ。古い思考ではどのような進展も成し遂げることはできない。気力が尽きるだけだ。これまでやってきたようにするのは、1人の女性と終わりなく踊るようなものだ。パートナーを変える時になった」
<インタビュー>金正恩は井の中の蛙…外部から「率直な仲裁役」出るべき(2)
<インタビュー>金正恩は井の中の蛙…外部から「率直な仲裁役」出るべき(3)
--韓半島情勢が悪化の一途にある。一次的な責任はもちろん北朝鮮にあるが、それが全てではないようだ。現況をどのようにみているのかまず気になる。
「韓半島問題に対して想像力のある思考をする人が誰もいない。誰もが強硬な思考の枠組みに閉じ込められている。破局に帰結することがいっそ自分の利益になると考える人々がいるのではないかとさえ思う時がある。今、各自が取っている一連の措置で現象を打開できると期待している人は誰もいないだろう。コルディウスの結び目やルービックキューブを手に、どうすることもできなくなっている姿だ」
--金正恩の無謀な挑発からすべてが始まった。
「認めたくない人が多いが今、自分の手に握ったカードを最もうまく駆使している人は金正恩だ。しかし金正恩も重大な失敗を犯した。あまりにも突き進んでいる。最近、平壌(ピョンヤン)に行ってきたさまざまな米国人の証言によれば社会的・経済的に北朝鮮が非常に活気を帯びているという。農民が作物の3分の1を直接処分できるようにするなど金正恩は北朝鮮の経済状況を改善するためにそれなりに肯定的な措置を取っている。だが4次核実験をして、すぐに続けて長距離ミサイル発射まで行ったことは明らかに常軌を逸したものだ。若い年齢にもかかわらず金正恩は権力を強固にすることには成功したが、ある意味で彼は『井の中の蛙』に過ぎない。彼はほかの種類の声を聞く必要がある。批判者ではなく助言者として彼に率直な話をする外部の人間が必要だ」
--「率直な仲裁者(honest broker)」ということか。
「まさにそれだ。ところで今そのような役割をする人が誰もいない。北朝鮮問題をめぐって米国と中国は『ブレイムゲーム(blame game)』をしている。米国は中国のせいにして、中国は米国のせいにする。金正恩は誰よりもこうした事情をよく分かっている。金正恩は賢いが、自身が持つパイ以上で『オーバープレー(overplay)』をする失敗を犯した。誰かが彼のところに行って率直に話さなければならない」
--どんな話をするということか。
「例えばこんな話だ。『さあ、あなたが国の状態が良くなるようにしようと努めている点は認める。だが核問題に進展がなければ、そのような努力だけでは限界がある。今すぐに核兵器を放棄しろというのではない。米国との間に一定の信頼が積み重なるまで非核化問題は後回しにしても、不拡散問題については米国との対話にすぐに着手する必要がある…』。信じるに足る外部の仲裁者が金正恩に会って、こうした話をしなければならない」
--誰がそのような役割を果たせる適任者だと思うか。
「私は韓国と北朝鮮を行き来しながら双方についてよく知っているロシアの人と興味深い対話をしたことがある。彼に金正恩が誰となら喜んで話をすると思うかと尋ねたところ『とても良い質問だ』としながら元米大統領のジミー・カーターとビル・クリントンを挙げた。私は仲裁外交で優れた技量を発揮したカナダに注目する必要があると考えている。カナダの元首相だったレスター・ピアソンは、スエズ運河を国有化したエジプトをフランスと英国が攻撃して触発された『スエズ危機』当時に積極的な仲裁に乗り出した功労でノーベル平和賞を受けた。テヘラン米大使館人質事件の時はカナダの外交官たちが中間で役割も果たした。当時首相だったピエール・トルドーは優れた外交官でもあった。彼の息子が現在のカナダ首相であるジャスティン・トルドーだ。金正恩は30代初め、トルドーは40代初めなので互いに話が通じるかもしれない。新しい思考が必要な時だ。古い思考ではどのような進展も成し遂げることはできない。気力が尽きるだけだ。これまでやってきたようにするのは、1人の女性と終わりなく踊るようなものだ。パートナーを変える時になった」
<インタビュー>金正恩は井の中の蛙…外部から「率直な仲裁役」出るべき(2)
<インタビュー>金正恩は井の中の蛙…外部から「率直な仲裁役」出るべき(3)
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