柳井正会長(66)
ユニクロは「ヒートテック」など機能性衣類が爆発的にヒットし、韓国で不動のSPA(企画・生産者が流通・販売までするブランド)1位だ。しかし世界1位ではない。ZARAを運営するスペインのインディテックスグループ、スウェーデンのH&M、米国のギャップに次いで4番目だ。柳井会長は「2020年までに世界トップになる」と宣言した。目標とする年間売上高は5兆円。昨年の約4倍だ。5年間で実現するのは難しいとみられる。しかし柳井会長は「目標が小さければ力が出ない。可能性しかないとしてもできる限り大きな目標を立てなければいけない」と強調する。5兆円に決めた理由も単純だ。「その程度の売り上げになってこそ世界1位になれる」ということだ。過去にも柳井会長は2010年までに売上高1兆円を達成すると発表した。実際、2010年の売上高は8148億円だった。しかし2013年に売上高が1兆1430億円となり、結局、目標を達成した。
--ユニクロの組織の最も大きな強みは。
「変化に迅速に適応するということだ。ファーストリテイリングという持ち株会社の名前のように、即断・即決・即時実行など速度に重点を置いて全社員が行動している。世界一になるためだ」
--経営者として選択も速いのか。
「経営者は常に選択の岐路に立っている。その瞬間、自分が持っている情報に基づき、何が最善かを速やかに決めて実行に移さなければいけない。状況をよく知らない状態でも、その瞬間に最も適した答えを考え出し、自ら指示しなければいけない」
柳井会長の迅速で果敢な決断は柳井会長の進退に克明に表れた。柳井会長はユニクロが急成長中だった2002年11月、専門経営者に社長を譲り、会長に退いた。しかし3年足らずでまた経営の一線に復帰した。「新しいことに挑戦せず安定した成長を目指し、売り上げは増えたが、営業利益が減少した状況」を「最悪」と判断したからだ。柳井会長は「私は急進派」とし「創業者はギャンブルのような決定もできるが、専門経営者の場合は堅実な決定をする」と評価した。しかし「ただの普通の会社ではなく世界的な企業、革新的な企業」になるには果敢な決断が必要ということだ。「資本主義の世の中ではすべての会社が激しく競争するが、『安定経営』や『安心経営』はありえない」というのが柳井会長の持論だ。
<世界革新企業家、未来50年を語る>(5)柳井ユニクロ会長…「安定経営ではトップになれない」(下)
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