経済対策をはじめとする国政には心理的な要因が重要だ。朴槿恵（パク・クネ）政権はＭＥＲＳ心理戦で敗れている。国民の前に登場する説明者は文亨杓（ムン・ヒョンピョ）保健福祉部長官だ。しかし文長官は福祉・年金学者出身であり、伝染病・防疫専門家ではない。少し遅れて指令塔を引き受けた崔ギョン煥（チェ・ギョンファン）首相代行は経済官僚出身だ。疾病管理本部長や感染病センター長のような専門家の声は小さい。

ＭＥＲＳ事態のような危機で、心理戦の最高司令官は大統領でなければいけない。朴槿恵大統領は初期から国民の前に出てくるべきだった。ＭＥＲＳ戦争を遂行する政府の戦士を紹介し、実務司令官（ｃｏｎｔｒｏｌ　ｔｏｗｅｒ）を決め、最高民間専門家を同席させ、この人たちにＭＥＲＳの実体を説明させればよかった。

朴大統領はなぜ記者会見をしないか。昨年も１回しかしていない。セウォル号事態では談話があっただけで、会見はなかった。今年もこれまで年頭会見がすべてだ。内閣制では首相が国会に随時出て説明する。同じ大統領制の米国ではオバマ大統領がホワイトハウス記者室を隣室のように出入りする。エボラ事態当時、彼は立派な「大統領演技」で国民を安心させた。


国民は大統領に「完ぺきな専門性」を期待していない。ただ事態を把握し、政府と民間人の専門性を動員して戦争を行う能力が見たいのだ。父の朴正熙（パク・ジョンヒ）大統領も完ぺきな専門家ではなかった。記者会見で専門的な事案は長官に答えさせた。政府は緊張させ、国民は安心させたのだ。

朴大統領は首席秘書官会議とＭＥＲＳ対策会議を主宰した。隔離施設がある病院にも行き、政府対策本部も訪れた。ところがなぜか生きて動く疎通力が感じられない。多くのことが間接話法に聞こえる。生きた疎通力が不足すると、政府に対する国民の不信は容易には減らない。ＭＥＲＳでは「密接」が禁物だ。しかし大統領には密接が重要な技術だ。専門的でなくても率直で自信のある記者会見を見たい。