「ビラ（ｂｉｌｌ）」は知っている。７０年近い分断の時期、南北が休戦ラインを挟んでどんなことをしてきたのか。今は「伝単」という高尚な名前で変身したビラには、分断と対決の歴史がそのまま反映されている。

ビラの紀元と見なされる韓国戦争（朝鮮戦争）当時は韓国と国連軍側が量的な面で圧倒した。投降勧告が主な目的だったが、「ビラ」を拾えば帰順時に身分保障の役割をしたという。「中国共産軍は最新武器を使うが、あなたたちには古いものを与えた」というやや幼稚な内容も目につく。

北朝鮮も負けていない。米軍慰問のため訪韓した女優マリリン・モンローの写真を入れ、「あなたが帰ってくるのを待つ」という英語のビラで米軍兵士を誘惑した。クリスマスには七面鳥の料理が置かれたパーティーの写真で郷愁を刺激する手法も動員した。戦意を喪失させるアイテムとタイミングを絶妙に調和させた心理戦術だ。


北朝鮮が経済的に優位だった１９５０－６０年代には対南攻勢が激しかった。平壌（ピョンヤン）のビルと家庭をビラに入れて「北に来なさい」とし、越北すればマンションと自動車を提供するという内容だった。美人計は北朝鮮の常套手段だ。韓国の女優の水着姿の写真を入れて作ったカラービラが流行した。非武装地帯北側の川に女性軍が集団で入浴をする“実戦”をしたりもした。

韓国の１人あたりの国民総所得（ＧＮＩ）が２１２ドルと、初めて北朝鮮（１９４ドル）を上回った１９６９年以降は状況が変わった。７１年の完工当時ソウルで最も高かったサムイルビル（３１階）を前面に出した。もちろん韓国も美人計を使った。情報当局が主導した当時のビラ散布は、正確度が現在の民間団体のものとは比較にならなかった。軍の協力で非武装地帯の奥深くに入って飛ばしたうえ、空軍機相手の正確な風向き情報に基づき望むところに送ることができた。

ビラとともに小型ラジオ、ラーメン、ストッキング、コンドームなども飛ばして送った。脱北者は「ビラとともに発見された食品には『南朝鮮傀儡が毒を入れた』と保衛部が宣伝したが、信じなかった」と話す。最近、民間団体はドル、映画・歌謡が入ったＣＤ、ＵＳＢなどを飛ばしている。

心理戦は放送や手紙など、さまざまな手段を動員する。四面楚歌という故事成語も結局は漢の劉邦の軍に包囲された楚の項羽軍に故郷の歌を聴かせて投降させたという古典的な心理戦術といえる。



韓国、対北ビラにラーメン・ストッキング…北は「ＤＭＺ女性軍入浴」心理戦（２）