ブラジルワールドカップ（Ｗ杯）がドイツの優勝で終わった。２大会連続で１６強入りを期待していた韓国は２敗１分けに終わった。好調だったブラジルは準決勝でドイツに１－７、３位決定戦でオランダに０－３と完敗した。福祉予算をＷ杯インフラに注いでいるという反発を招きながら投入した１２兆ウォン（約１兆２０００億円）の経済効果（５３兆ウォン）は空中分解した格好だ。最も大きな恩恵を受けた国は中国、労働集約的であれ先端産業であれ一人勝ちしたという。

改めて２００２Ｗ杯を思い出す。当時のことを考えると、今でもエンドルフィンが湧き出すようだ。我々は環境Ｗ杯という旗幟のもと、町ごとにクリーンアップリーダーを選抜し、韓国代表サポーター「レッドデビルズ」に会って協調を求めた。競技の休み時間には大型スクリーンに周囲のゴミを片づけるクリーンアップタイムアニメを映し出した。市内の応援モニターにも同じようにその画面が浮かんだ。海外メディアには、雲のように集まった群衆が去った後がなぜこれほど整理されているのかという記事まで掲載された。特に記憶に残るのは腰が曲がるほど頑張る環境美化員との出会いだった。あらかじめ地域の環境美化員グループを訪ね、協力をお願いしながらモチとジュースで乾杯した。競技が終わった後には、代表団を１泊２日の温陽温泉慰安旅行に送った。環境部ホームページにはよくやったという称賛のコメントが書き込まれた。

今だと思って推進した大型政策事業がＣＮＧ（圧縮天然ガス）バスの普及だ。当時、競技が行われる１０都市の軽油バスの媒煙は、排出許容基準を強化するからといって解決されるものではなかった。ちょうどＣＮＧ専用エンジンの開発が試験段階だった。しかし良い新技術だからといって市場参入に成功するわけではない。新技術代替に対する経済的インセンティブとそれに合う社会的インフラを構築しなければならない。


主務長官としては事業の重要性を認められ、予算を確保することが最優先課題だった。当時、ＣＮＧバスは軽油バスより２２５０万ウォン高かった。それを埋め、付加価値税・取得税・環境改善負担金を免除しなければならなかった。都市ガス事業者支援は別途だった。このため金大中（キム・デジュン）大統領に会って熱心に説明し、「国民の政府が終わった後にも、韓国の国民がＣＮＧバスを見ながら環境政策の成功事例を実感するはずだ」と説得した。金大統領は快く同意した。

しかしこの事業は環境部のソロ事業ではなかった。エンジンなど技術開発と安全基準は産業資源部・科学技術部・教育部などと絡んでいる。予算支援は企画予算処の承認を受け、地方政府と手を組まなければならなかった。その頃、環境性が改善されたＬＰＧバスが開発され、状況はさらに複雑になった。狭い韓国国内市場で自動車業界は３種類のバスの製作を避け、各部処の見解も違った。

何よりもこの事業のアキレス腱はＣＮＧ充填所の建設だった。土地がなく、安全性に対する懸念と不信で行き詰まった状況だった。ついに建設交通部の協力まで引き出し、グリーンベルト地域にまで入った。充填所の竣工には長官があたふたと参加した。国民歌手のイ・ミジャ氏も一緒にしたことを思い出す。メディアにも写真も載せられたから。Ｗ杯を控えては移動式充填車両まで導入しなければならなかった。しばらく予算執行率は底をさまよった。メディアもたたき、国会も開かれるたびに追及した。「ああ、こんなことになるなら着手しなければよかった」という愚痴が自ずと出てきた。

ところが長官を終えてみると、功績の一つとなった。公職を終えた後には私自身も常連の乗客となった。Ｗ杯のこの遺産はバス３万４０００台と清掃車１２００台などに膨らんだ。最近は環境性と燃費を高めたＣＮＧハイブリッドバスも登場した。ＣＮＧバスの普及の影響で、ソウル市の粒子状物質は２０００年に比べ３分の１ほどに落ちた。環境改善の純便益にすると１兆ウォンを超える。

しかし歳月が流れた。すべてのものが変化する。来年から軽油バスに対する環境基準がユーロ６に強化される。温室効果ガス排出では軽油車側がさらに有利となる。窒素酸化物と粒子状汚染物質排出はＣＮＧ側がさらに有利だ。中国発スモッグまで飛んでくる状況であるため、粒子状物質のコントロールはさらに重要な政策課題になるだろう。いずれにしてもＣＮＧバスに対する補助金支援の名分が色あせることになった。これを反映し、政府はその間の補助金を段階的に縮小し、中断するという。技術革新の時代、政府は、「技術志向」（ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙ　ｐｕｓｈ）と「需要牽引」（ｄｅｍａｎｄ　ｐｕｌｌ）がよく作動し、躍動性と安定性が調和する過渡期的な転換をうまく導くことが課題だ。

キム・ミョンジャ元環境部長官