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【コラム】ある中年公務員が人生をあきらめる時=韓国(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
私たちが確かに知っているのは、ただ現在だけだ。訪れていない未来はもちろんのこと、すぐに行き過ぎてしまう過去さえも正確に組み立てるのは難しい。間違いなく覚えているはずの過去が、世間に背を向けた気持ちならばより一層そうだ。最近、自ら人生をあきらめた公務員の心理状態が法廷に提出された。裁判所はその結果を、遺族補償金支給判決の根拠と認めた。「心理的解剖検査」を受け入れたのだ。法廷で初めて表れた韓国の中年会社員の心象、私たちは決して愉快なものではない現実と向かい合わなければならない。

ヒラからスタートして主査(6級)まで昇進した釜山(プサン)の地方公務員、1965年生まれ。彼を65氏と呼ぼう。65氏は酒をほとんど飲まず、家族にはいつも細やかな人だった。心理解剖検査の結果、家族関係は円満だったし大きな持病もなかった。「思いやりが強かった」「つらくても、そんなそぶりを見せなかった」「責任感が強かった」という周囲の証言も出てきた。内省的で誠実な男性、平均的な中高年の会社員の姿だった。

悲劇的な選択をする13カ月前、65氏は大変な職務(本庁係長)を自任する。彼は職場の後輩に「仕事は多いが特別昇進の対象者になれる職務」と話した。6級のまま6年になる状態だった。65氏は毎日午前7時半から夜8時まで仕事に没頭する。すると本庁はさらに多くを望む。係長業務とは別に特別業務班を引き受けるよう命じる。上司はチーム員6人を約束したが3人しか補充されなかった。極端な選択をする前の2カ月間、65氏の超過勤務時間は計204時間52分だった。


この時から65氏は変わっていく。しばしば食事を抜かし、34インチだったウエストが31インチに減った。「補充なしで仕事をしようとすれば○○ほど大変だ」(職場同僚の証言)という愚痴をたびたびこぼしていた。睡眠誘導剤も服用する。「寝る時、手が汗でびっしょりぬれていたこともある」(妻の証言)という。一日は息子と一緒に銭湯に行く。息子に申し訳ない顔で話す。「力がなくて、背中を押してあげられないね」。



【コラム】ある中年公務員が人生をあきらめる時=韓国(2)

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