益田ミリ著『夜空の下で』表紙。
この漫画は、唐突にも宇宙の話だ。しかし、作家の視線は巨大な宇宙のある片隅でただひたすら生きていく人々に留まる。例えば、『流星』編には偶然流星を見て帰ってきて「叶えたい願いを考えてみたら、ひとつしか思い浮かばないんですよ。この会社止めたいということでした」と何気なく告白する会社員が登場する。「もし、お星様が空から落ちたらどうする?」と質問する少年にママは話す。「星が落ちたら無条件に走らなくちゃ。いつだって逃げる時は振り返らなくても良い。生きているのが重要だから。」星のように光りたいという息子にパパが聞かせる返事はこれだ。「皆が皆、キラキラ光らなくても大丈夫。光らなくて幸いな人もいるし。」
本の途中途中に登場する宇宙に関する情報も「ヒーリング用」だ。私たちが今見ている星の光は何百年もかかって地球に到着したものだとか、私たちが生まれて死ぬ時までの時間は宇宙次元で見れば無と違わないという話などを聞けば、瞬間的ながらも私の日常を支配した悩みがささいに感じられるから。宇宙には周辺の星に押されて軌道からはじかれて、ふわりとふわりと宇宙をさ迷う「流れ者惑星」も数千億個も存在するという。ひとりで道に迷ったという気がする時は、空を見上げて孤独な惑星の友人を思い出してみても良いだろう。
年末だ。「来年は何歳だろう」と尋ねる人々に「それが何の意味があるんですか。地球が太陽の周りをひと回りさらに回っただけではないのですか」と言って「コスモス的怒り」で対抗したくなる。しかし、いくら夜空を上げてみても慰めがやって来ない時は、宇宙を素材にした傑作映画『ゼロ・グラビティ』の名セリフを繰り返して言うほかない。「どっちにしろ確実な一つは(新年も)途方もない旅になることという事実だ…。(息一度大きく吐いて)アイムレディー(I‘m ready)。」
イ・ヨンヒ(文化スポーツ部門記者)
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