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【コラム】“鉄腕アトム”50歳の小市民になる

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

ヒョン・テジュン氏、『ア…ボジ』、2006、80x60cm

なめらかな肌にクリっとした目、翼もなしに空を飛んで地球を守った“鉄腕アトム”。彼もいつのまにか家長になった。見送る妻子を後に今日も出勤する。昨夜に会食をしたのか苦々しい表情になっているのは栄養ドリンクでも1本渡さなければならないようだ。意志の強い少年ロボットの無邪気な表情は、影も形もない。ヒョン・テジュン氏の『鉄腕ア…ボジ(アボジ=父親)』だ。

アトムは1951年、手塚治虫(1928~89)が漫画の連載を始めて生まれた。1963年には日本で最初のテレビアニメとして制作され、計193編のシリーズで放映された。アトム放送50周年を記念して、日本の東京都現代美術館では『マンガの力』展を開催している。いつのまにか50歳、漫画の主人公も“知天命”(注:「五十而知天命、五十にして天命を知る」から)に達した。しかし年だけを取って、天命どころか地上の常識さえも分別し難い。背景のみすぼらしい家からもくもくと上がっている黒い煙のように、“ア…ボジ”になったアトムの現在と未来は不確実なものだ。地球を救う名分で戦った戦争ではなく、自分と自分の家族を救うことにも汲々としながら日々の戦争に追われる小市民アトムだ。ただ毎日毎日、疲れるばかりなのだ。

美術館でのアトム展示は、漫画の原画展が持つ地味な印象を解消しようと多角的に努力したようだった。額縁の代わりにアトムが生まれそうな透明カプセルの中に原画を入れて展示した。展示場の説明パネルも漫画で描き、手塚治虫の家を70%に縮小した模型図もつくった。漫画家が幼少期を過ごした部屋には当時のラーメン、サイダー、やかんまで持ち込まれていた。これほどになればアトムも“郷愁”商品だ。


アトムは韓国の現代美術でも愛されるアイコンだ。アトムと童心を共にした若い美術家が主力だ。イ・ドンギ氏(46)の『アトマウス』は、アトムとミッキーマウスの結合体で、93年に生まれた。絵の中のアトマウスはうどんを食べてシャボン玉のように軽々とキャンパスの上を漂う。この韓国的ポップアートはキャラクター商品ではなく美術品として主な展示空間や市場で脚光を浴びている。ヒョン・テジュン氏の『ア…ボジ』は、これとは違いB級の情緒で満ちている。“美術界のPSY”として韓国的なおもちゃ収集界の大物であるこの作家のアイデンティティに似ている。

漫画の中のアトムの誕生日は2003年4月7日だ。制作当時、遠い未来と想定された時間だ。今ではアトムは未来でなく過去に住んでいる。「はやくはやく」という既成価値が闊歩(かっぽ)していた裏舞台で“変形”アトム美術を試みた若者たちも、もう50歳を眺めるおじさんになった。おじさんと大して変わらないこのおばさんは、絵を観てくすくすと笑い、ふと胸が痛くなる。

クォン・クンヨン文化スポーツ部門記者



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