犠牲と献身。サッカー国家代表を象徴する価値が揺れている。分別のない言葉のためだ。

奇誠庸（キ・ソンヨン、２４、スウォンジーシティ）が秘密ソーシャルネットワークサービス（ＳＮＳ）で、チェ・ガンヒ監督を非難したと、ネットメディアが４日報じた。

チェ監督の赴任初期だった昨年２月２９日、クウェートとのブラジルワールドカップ（Ｗ杯）３次予選最終戦の前後に書き込んだコメントだ。試合前、奇誠庸は「クウェート戦は私と朴主永（パク・ジュヨン）先輩の責任になるだろう。うまくやって当然、うまくできなければただでは済まない。招集前から因縁をつけるのを見ると、うまくできないのを望んでいるんだろう。おもしろそうだ」と書いた。


クウェートに２－０で勝った後には「クウェート戦を無事に終えた。実際、今回のゲームは非常に残念だった。最終予選に行けばこの程度ではどうなるか分からない。前半から出られず、ショックを受けて失望したが、もうすべての人が感じただろう。海外組の必要性を。黙っている私たちを怒らせるべきではなかった。次からはそのような傲慢な態度を見せないことを望む。このままでは痛い目にあうだろう」とコメントした。

奇誠庸側はこうしたＳＮＳアカウントの存在について口を閉じている。エージェントのＩＢスポーツは「事実関係は確認できていない」と述べた。しかし友人目録に奇誠庸の姉や同僚のチャ・ドゥリがいるため、奇誠庸のアカウントである可能性が高い。

先月行われたブラジルワールドカップ（Ｗ杯）アジア最終予選終盤の３連戦を控え、奇誠庸とチェ・ガンヒ監督の間にあつれきが生じていたことは、サッカー界の公然の秘密だった。今回明らかになったＳＮＳを見ると、２人の葛藤はチェ監督の就任初期から始まったことが分かる。

国家代表の主軸選手がＳＮＳでチームを冒とくするようなコメントを書いたことに、ファンは驚いている。序盤６試合を５勝１敗と好調だったチェ監督の代表チームが徐々に無気力な姿になっていったのも、こうした葛藤と関係がある。

サッカー界では今回の件を転機にすべきだという自省の声が高まっている。サッカー協会のイ・ヨンス未来企画団長は「一度何とかしなければいけない問題だった。今からでもＳＮＳに関するガイドラインを作る必要がある」と述べた。

許丁茂（ホ・ジョンム）サッカー協会副会長は「一つに団結しても世界サッカーと競争するのは容易でない。代表チームの価値を考え直す契機になることを願う」と話した。

洪明甫（ホン・ミョンボ）監督は４日の記者懇談会でこの問題に言及した。「昨年ロンドンオリンピック（五輪）当時、大会が終わるまではＳＮＳをしないことを選手と約束した。約束はよく守られたが、銅メダルを取った後、すぐにロッカールームの雰囲気などがＳＮＳに登場して驚いた」と話した。

洪監督は「若い選手たちにとってＳＮＳは生活の一部だ。これを完全にするなというわけにはいかないが、代表チームにいる間はお互い規範を作らなければいけない」と解決法を提示した。

「奇誠庸は洪監督が望む、チームのために献身する選手とは距離があるのでは」という直接的な質問も出てきた。洪監督は「チームワークを乱す選手を扱う方法は２つある。一つは外すことだ。しかし本当に必要なら、時には監督が選手の機嫌を取ったりもする。今回、ロシアのＦＣアンジに行ってヒディンク監督が孫ほどの選手をどのようになだめて説得するかを見ながら気の毒に感じることもあった」と答えた。

しかし奇誠庸を無条件に抱えていくというわけではない。洪監督は「今晩、チェ・ガンヒ監督と会う。その間チームをよく導いてくれたことに感謝の言葉を伝えたい。これがどういう意味か、選手たちがよく考えることを望む」と述べた。緩んだチームの精神を引き締め、韓国サッカーの伝統を回復しようという暗黙的な注文だ。