米国のオバマ政権2期目のアジア重視政策で、環太平洋経済連携協定(TPP)の戦略的成功ほど重要なことはない。 TPPは米国と豪州・ブルネイ・カナダ・チリ・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・ベトナムなどが参加する広範囲な自由貿易体制だ。 韓米自由貿易協定(FTA)に続き、アジア・太平洋地域を自由貿易地帯とする重要な過程だ。
昨年12月3日から12日まで豪オークランドで行われた交渉では、知的財産権・国営企業・環境・投資をはじめとする複雑な問題とともに、商品・サービス・農業の市場接近に関する微細調整などを扱った。 貿易に対する技術的障壁と通信・関税、そして衛生・検疫基準など技術的な問題の解決にも焦点を合わせた。
次の交渉はシンガポールで4日開幕し、13日まで続く。 今回の交渉はまだ解決していない協定文の準備と市場接近問題に焦点を置いている。 今年末までに交渉を終え、来年ハワイ・ホノルルで開かれる首脳会談でこれを発表するのが目標だ。 米国は韓国・日本のような主要国家がTPPに参加し、交渉に大きな転機をもたらすことを希望している。 2月の安倍晋三日本首相の米国訪問は、日本の合流のための第一歩と見られる。
米国がTPPに進む最も確実な道が大統領の貿易促進権限(TPA)の復活だ。TPAは米政府システムの独特の産物だ。米憲法に基づき米議会は「外国との貿易を規制」する権限があり、「税金・関税・輸入賦課金・消費税を賦課・徴収」できる。憲法に基づき大統領は貿易に関する権限がないが、外国と条約を交渉する権限はある。
1974年の貿易法で、米議会は大統領に初めて貿易協定を扱う権限を与えた。この法は大統領に「迅速処理権限」と呼ばれる権限を付与し、米国の貿易相手国が不公正貿易をしたり非関税障壁を作る問題について交渉できるようにした。議会はこの迅速処理権限(02年からTPAと呼ばれた)を周期的に再認証できるようにした。また大統領は議会に報告書を提出し、議会はホワイトハウスに貿易問題に関して定期的に諮問するように規定を作った。その代わり議会は大統領が結んだ貿易協定を90日以内に修正なく投票に付すことにした。
こうしたTPAは交渉の場で貿易協定に関連した米政府機関の信頼度を高めた。これはホワイトハウスに力を与えた。交渉相手国に交渉内容が後に変更される心配がないことを確信させた。これを受け、米大統領はこの権限を活用し、1979年の東京ラウンド交渉、85年の米・イスラエルFTA、88年の米・カナダFTA、93年の北米自由貿易協定(NAFTA)、94年のウルグアイラウンド協定など、数多くの貿易関連協定を処理した。ブッシュ大統領時代にはチリ(2003)、シンガポール(2003)、豪州(2004)、バーレーン(2004)、モロッコ(2004)、ドミニカ共和国(2005)、オマーン(2006)、ペルー(2006)、コロンビア(2006)、パナマ(2006)、そして韓国(2007)とFTAを締結した。
では、オバマ政権はなぜ議会にこの権限を要請しなかったのか。過去のTPA更新は党派を超えた問題だった。しかしクリントン政権から政争の対象になった。クリントンは94年、TPA更新に失敗した。労働条件と環境問題で隔たりがあったからだ。民主党は大統領が労働と環境規制条項を貿易交渉の一部門として含むことを望んだが、共和党はそうではなかった。その結果、その後8年間、ホワイトハウスはTPAなく過ごすしかなかった。迅速処理権限は02年、ブッシュ政権に入って更新された。
TPAで翼を得たブッシュ大統領は積極的に自由貿易アジェンダを追求し、5年間に17カ国と協定を進めた。しかしイラク戦争などをめぐり議会とホワイトハウスが激しく対立、議会はTPA延長に失敗し、これは07年7月1日0時に終了した。
オバマ政権はTPA更新に圧力をかける良い位置にいる。再選勝利直後であるうえ、自ら唱えた国家輸出イニシアチブ(2010年の一般教書演説で明らかにしたもので、2014年末までに輸出を2倍に増やし、米国内に数百万件の雇用を創出するという内容)によると、貿易アジェンダを活用して輸出目標を達成し、米国経済を成長させなければならない。しかし今のところは議会もホワイトハウスも動く準備ができていない。
このように遅れている理由は、民主党・共和党・ホワイトハウスの貿易交渉の優先順位がお互い異なるためだ。共和党は農業分野交渉と関連した大統領の権限に注目している。民主党は労働と環境分野に関心がある。
TPAを更新して迅速な貿易協定批准が可能になれば、中国の関心も引き込める(韓国と日本が参加すればより有利となる)。韓米FTA締結が3、4年ほど過ぎてから米議会を通過したという事実も、TPAがどれほど必要かをよく表している。オバマ大統領がアジアに残す最も重要な遺産は、アジア重視政策の宣言ではなく、韓米FTAとTPPを通して自由貿易体制を実現させることだ。米国はTPAなしにこれを実現することはできない。
ビクター・チャ米ジョージタウン大教授
昨年12月3日から12日まで豪オークランドで行われた交渉では、知的財産権・国営企業・環境・投資をはじめとする複雑な問題とともに、商品・サービス・農業の市場接近に関する微細調整などを扱った。 貿易に対する技術的障壁と通信・関税、そして衛生・検疫基準など技術的な問題の解決にも焦点を合わせた。
次の交渉はシンガポールで4日開幕し、13日まで続く。 今回の交渉はまだ解決していない協定文の準備と市場接近問題に焦点を置いている。 今年末までに交渉を終え、来年ハワイ・ホノルルで開かれる首脳会談でこれを発表するのが目標だ。 米国は韓国・日本のような主要国家がTPPに参加し、交渉に大きな転機をもたらすことを希望している。 2月の安倍晋三日本首相の米国訪問は、日本の合流のための第一歩と見られる。
米国がTPPに進む最も確実な道が大統領の貿易促進権限(TPA)の復活だ。TPAは米政府システムの独特の産物だ。米憲法に基づき米議会は「外国との貿易を規制」する権限があり、「税金・関税・輸入賦課金・消費税を賦課・徴収」できる。憲法に基づき大統領は貿易に関する権限がないが、外国と条約を交渉する権限はある。
1974年の貿易法で、米議会は大統領に初めて貿易協定を扱う権限を与えた。この法は大統領に「迅速処理権限」と呼ばれる権限を付与し、米国の貿易相手国が不公正貿易をしたり非関税障壁を作る問題について交渉できるようにした。議会はこの迅速処理権限(02年からTPAと呼ばれた)を周期的に再認証できるようにした。また大統領は議会に報告書を提出し、議会はホワイトハウスに貿易問題に関して定期的に諮問するように規定を作った。その代わり議会は大統領が結んだ貿易協定を90日以内に修正なく投票に付すことにした。
こうしたTPAは交渉の場で貿易協定に関連した米政府機関の信頼度を高めた。これはホワイトハウスに力を与えた。交渉相手国に交渉内容が後に変更される心配がないことを確信させた。これを受け、米大統領はこの権限を活用し、1979年の東京ラウンド交渉、85年の米・イスラエルFTA、88年の米・カナダFTA、93年の北米自由貿易協定(NAFTA)、94年のウルグアイラウンド協定など、数多くの貿易関連協定を処理した。ブッシュ大統領時代にはチリ(2003)、シンガポール(2003)、豪州(2004)、バーレーン(2004)、モロッコ(2004)、ドミニカ共和国(2005)、オマーン(2006)、ペルー(2006)、コロンビア(2006)、パナマ(2006)、そして韓国(2007)とFTAを締結した。
では、オバマ政権はなぜ議会にこの権限を要請しなかったのか。過去のTPA更新は党派を超えた問題だった。しかしクリントン政権から政争の対象になった。クリントンは94年、TPA更新に失敗した。労働条件と環境問題で隔たりがあったからだ。民主党は大統領が労働と環境規制条項を貿易交渉の一部門として含むことを望んだが、共和党はそうではなかった。その結果、その後8年間、ホワイトハウスはTPAなく過ごすしかなかった。迅速処理権限は02年、ブッシュ政権に入って更新された。
TPAで翼を得たブッシュ大統領は積極的に自由貿易アジェンダを追求し、5年間に17カ国と協定を進めた。しかしイラク戦争などをめぐり議会とホワイトハウスが激しく対立、議会はTPA延長に失敗し、これは07年7月1日0時に終了した。
オバマ政権はTPA更新に圧力をかける良い位置にいる。再選勝利直後であるうえ、自ら唱えた国家輸出イニシアチブ(2010年の一般教書演説で明らかにしたもので、2014年末までに輸出を2倍に増やし、米国内に数百万件の雇用を創出するという内容)によると、貿易アジェンダを活用して輸出目標を達成し、米国経済を成長させなければならない。しかし今のところは議会もホワイトハウスも動く準備ができていない。
このように遅れている理由は、民主党・共和党・ホワイトハウスの貿易交渉の優先順位がお互い異なるためだ。共和党は農業分野交渉と関連した大統領の権限に注目している。民主党は労働と環境分野に関心がある。
TPAを更新して迅速な貿易協定批准が可能になれば、中国の関心も引き込める(韓国と日本が参加すればより有利となる)。韓米FTA締結が3、4年ほど過ぎてから米議会を通過したという事実も、TPAがどれほど必要かをよく表している。オバマ大統領がアジアに残す最も重要な遺産は、アジア重視政策の宣言ではなく、韓米FTAとTPPを通して自由貿易体制を実現させることだ。米国はTPAなしにこれを実現することはできない。
ビクター・チャ米ジョージタウン大教授
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