KTXの日直(イルジク)トンネル内の脱線事故は考えるほどぞっとする。光明(クァンミョン)駅の手前で走行速度を時速90キロに落とす区間だったため幸いだった。もし時速300キロ台で走る区間で脱線していればどうなっていただろうか。大事故につながるかもしれなかった事故の原因は、現場作業者が転轍機にナット一つを取り付けなかったためだという。実に情けないことだ。爪ほどの大きさのナットと一瞬の不注意が高速鉄道の脱線を招くことになったからだ。
すべての事故は油断から始まるという。今回も作業者がナット一つをつけずに整備を終えたのが禍根になったということだ。列車が運行し始めてから信号機械室に「エラー」が3度も表示されたが、光明駅の関係者は上下線では主線路でのみ直進するように臨時措置を取ったという。ところが事故列車は光明駅が終着地であるため、主線路から移って進入し、脱線した。結局、人的過失による線路転換誤作動が事故原因ということだ。
高速では部品一つ、小さな不注意も大事故につながるおそれがある。1998年に乗客101人が死亡したドイツ高速列車ICEの脱線事故も車輪を固定するリング一つが破損して発生した。107人が死亡した05年の兵庫県の快速列車脱線事故は、曲線区間での遠心力のために発生した。しかし事故対処方式は学ぶことができる。日本は直ちに脱線対策協議会を設置し、綿密な調査をもとに、事前の線路点検の強化はもちろん、レール締結装置と接着絶縁継目の改良にいたるまで、細心に安全対策をまとめた。
韓国は「早く早く」ばかり強調してきた。08年の運行速度を時速300キロから305キロに上げたのがその代表的な例だ。わずか5キロにすぎないが、安全よりも走行速度300キロ台という点にこだわったのではないだろうか。速度技術の核心は制御だ。いくら速くても安全が伴わなければ高速凶器にすぎないという点を鉄道公社は銘記することを願う。
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