トイレより携帯電話が多い国。 それはインドだ。 携帯電話の加入者は12億人の人口の半分に達する半面、まともなトイレを使用できる人はわずか3分の1だ。 大多数の国民に基本的な衛生インフラさえも提供できないインド政府の無能さを皮肉るため、今年の春に国連が発表した統計だ。 裏を返せば、この数値は民間企業の驚くべき能力を誇示している。 トイレもなく暮らす貧民層にまで電話機を売っているのだから。
「インド経済は、政府のおかげではなく、政府がいるにもかかわらず発展する」というインド出身評論家ファリード・ザカリアの言葉も過言ではない。 トイレのみならず、インドは劣悪なインフラで悪名高い。 それを克服したのが企業の力だ。 「道路・港湾が劣悪なため物を輸出するのが難しければ、電線・電話線を通じてサービスを輸出すればよい。 政府が眠る夜中にむしろ経済は成長する」(グチャラン・ダース元プロクター・アンド・ギャンブル・インディア代表)。 「世界のコールセンター」と呼ばれるほど評判がよいサービス産業、結局は政府のおかげ(?)なのか。
インド経済の本当の競争力は絶えず供給される「若い血」。 1世帯当たり2.6人の高い出産率で人口の半分が25歳以下だ。 これに対し、同じく人口大国のライバル中国は急速に老いている。 2050年には65歳以上の高齢者が3億人に増える。 先進国になる前に高齢化国家になる最初に事例になりそうだ。 「世界の工場」の役割を果たすのもだんだん難しくなるだろう。
「近い将来、象(インド)が竜(中国)を追い抜く」という声が出ている理由だ。 最近、英経済週刊誌エコノミストは「2011年地球村展望」で、来年にもインドの経済成長率が中国を抜く可能性があると予想した。 ‘階級’差が大きい中国経済に追いつくには、この速度で17年間はさらに成長しなければならないというが、得意顔になるのも分かる。 インドとは違い、政府主導で一糸乱れず走ってきた中国経済が‘一人っ子政策’の影響で足踏みする姿だ。
決して他人事ではない。 世界有数の機関が韓国経済の成長動力を蚕食する最大の伏兵に低出産・高齢化を選んでいる。 この宿題だけでも大変なのに、北朝鮮リスクまでが足手まといになれば狼狽するしかない。 象と竜が競いながら疾走する姿を気楽に眺めている場合ではないのだが…。
申芸莉(シン・イェリ)論説委員
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