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北朝鮮が23日、海岸砲で延坪島(ヨンピョンド)に攻撃を加えたことで、南北関係が一寸先も見えない状況に陥った。すでに25日に予定されていた赤十字会談を政府が延期し、3月26日の天安(チョンアン)艦挑発にもかかわらず維持されてきた開城(ケソン)工業団地の存廃問題も浮上している。
政府と大韓赤十字社の対北朝鮮コメ支援(5000トン)と離散家族再会行事をはじめとする南北和解の雰囲気が醸成された局面であるため、衝撃はさらに大きい。
北朝鮮はウラン濃縮施設の稼働と公開に続き、在来式の局地挑発まで強行したことで、対立局面は相当期間続く見込みだ。6カ国協議を含む国際社会の対北朝鮮接近構図にも影響を及ぼすとみられる。北朝鮮の外交的な孤立が深刻になるのも間違いない。
北朝鮮攻撃の表面的な理由は、韓国海軍がペクリョン島沖で実施した砲射撃訓練に対する反発と考えられる。北朝鮮最高司令部は官営朝鮮中央通信を通した報道文で、「南朝鮮の傀儡が幾度の警告にもかかわらず、延坪島一帯の北側の領海に砲射撃を加える挑発を敢行した」と主張した。
しかし軍当局者は「延坪島で護国訓練はなかったし、例年の砲射撃訓練が南側に向けて行われたにすぎない」と反論した。訓練を口実に挑発を敢行したということだ。
軍・政府当局と専門家は「今回の攻撃は対米・対南戦略の軸を大きな枠で揺さぶろうという金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の緻密な計算から出てきた」と分析している。米国の核専門家を呼んで濃縮ウラン核開発プログラムを見せた直後に、延坪島に向けて高強度の挑発を敢行したという点からだ。
鄭永泰(チョン・ヨンテ)統一研究院選任研究委員は「核カードでオバマ政権に対して朝米直接対話の圧力をかけ、李明博(イ・ミョンバク)政権には‘これでもか’と忍耐力をテストしている局面」と述べた。局地戦形態の攻撃を通して韓半島が不安定な地域であることを浮き彫りにし、朝米平和協定の締結など自国の要求を貫徹させるための布石ということだ。
後継者の金正恩(キム・ジョンウン)と今回の挑発に深い関係があるという分析もある。北朝鮮が「金正恩は金日成(キム・イルソン)軍事総合大砲兵学科に通った砲兵専門家」と宣伝してきたうえ、1月に金正日が参観した陸・海・空合同軍事訓練で砲射撃訓練を金正恩が総指揮したという情報もあるからだ。
キム・ヨンス国防大教授は「金正恩後継体制の早期定着に向けて条件を整えるための挑発」と指摘した。経済難の中、対北朝鮮支援の確保も壁にぶつかるなど、後継構築条件が悪化し、延坪島攻撃という高強度の挑発に踏み切ったということだ。
キム・ジョンドゥ合同参謀本部戦力発展本部長(中将)もハンナラ党の緊急最高委員会に出席し、「北方限界線(NLL)無力化、金正恩への後継体制固め、軍事的緊張を通した南北関係主導権の確保など多目的の布石」と分析した。情報当局者は「北朝鮮が今後、今回の事態を金正恩が主導したという形で宣伝し、後継者の‘軍事指導力’と‘大胆性’を強調する方向で活用する公算が大きい」と述べた。
軍部強硬派の軍事冒険主義的な行動という診断もある。9月の労働党代表者会で金正日の三男・金正恩とともに党中央軍事委副委員長に就任した李英浩(リ・ヨンホ)総参謀長、西海岸地域を管掌する金格植(キム・ギョクシク)第4軍団長らが主導して挑発したということだ。昨年2月の総参謀長任命直後、李英浩が主導した砲射撃訓練を金正日国防委員長が参観するなど、軍部には重みがかかっている状態だ。
金正日・金正恩の統治資金確保に必要な金剛山(クムガンサン)観光の再開などが李明博政府の原則的な立場のために行き詰まり、対南協議派の位置づけが狭まったという解釈もある。アン・チャンイル世界北朝鮮研究センター所長は「3月26日の天安艦事態以降、北朝鮮軍部の強硬派としては他の選択がないのだろう。軍部の掌握を加速させている金正恩と李英浩が極端な考えをしていないか憂慮される」と述べた。
李明博政権の対北朝鮮政策に対する不満の表示と韓国内世論の分裂を狙った布石という見解もある。
◇護国訓練=合同参謀主導で陸・海・空軍合同作戦遂行能力を培養するために毎年実施する例年の訓練。かつて陸・海・空軍別に実施していた訓練を1988年に統合し、「統一訓練」として行っていたが、96年に陸軍の軍団級野外実機動訓練を組み入れて「護国訓練」と命名した。青軍と黄軍に分け、攻撃と防御を交代で実施する。今年の訓練日程は22日から30日まで、京畿道(キョンギド)驪州(ヨジュ)・利川(イチョン)・長湖院(チャンホウォン)一帯で行われる。
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