農民団体が北朝鮮のコメ支援要請に喜色を見せるのも無理はない。 今年１０月末基準で韓国のコメ在庫は１４９万トンになる。 国連食糧農業機関（ＦＡＯ）勧奨適正在庫量７２万トンの２倍だ。 コメの価格は昨年８月の８０キロ当たり１５万１４００ウォンから今年９月現在１２万ウォン（約９０００円）台に暴落している。 ついに今年５月、農民はソウル汝矣島（ヨウィド）でコメ価格暴落の解決を求めるデモを行った。 コメを保管する倉庫の確保も問題だ。 コメの在庫が増えれば、現在ある中央政府と地方自治体の倉庫、民間会社の物流倉庫では足りない。 コメ保管にかかる費用も年間４０００億ウォンに迫る。 与党の対北朝鮮コメ支援再開要求は理由が十分にある。

農林水産食品部が８月末に出した「コメ需給安定対策」は傑作だ。 モチ、パン、麺類、菓子、マッコリ（濁酒）、トッポッキの製造原料を拡大し、包装米飯、冷凍炒飯などの製品を増やし、コメとコメ粉を容易に調理できる即席調理機械を普及させる方針だ。 大型売り場にコメ粉製品コーナーも作る。 子どもたちはトッポッキを好きなだけ食べ、大人は愛国精神でマッコリをたくさん飲む。 政府は古米を家畜用飼料に使用することを望んでいるが、農者天下之大本の国で国民情緒上それはできない。

コメがあふれて混乱している韓国とは対照的に北朝鮮は食糧難で国民の不満が高まっている。 ２００９年１１月から２０１０年１０月までが北朝鮮の２０１０糧穀年度だが、農村振興庁が計算したこの期間の北朝鮮食糧生産量は４１１万トンだ。 北朝鮮が必要とする食糧５２０万トンに１００万トン以上も足りない。 さらに夏には北朝鮮の穀倉地帯に大洪水が発生し、２０１１糧穀年度の食糧生産は今年より２０万トン以上減る見通しだ。


金正日がいくら水を飲みながらも楊枝をくわえるような虚勢を見せても、多数の国民が飢餓線上でさまよう状況を長く放置することはできない。 天安（チョンアン）艦事件がなければ、おそらく北朝鮮は韓国にもっと早く手を出していたはずだ。 今からでも体面を気にせず要請の声を出すことは意味がある。 北朝鮮のコメ支援要請が、金正日が最近の訪中期間に構想したものなら、よりいっそうコメ支援の効果が期待される。 最近中国を訪問した朝日新聞の船橋洋一主筆は、金正日が胡錦濤・国家主席にこれからは韓国と米国により柔軟な態度をとるという約束をしたと聞いた、と伝えた。 コメと掘削機と肥料を少しくれという要請を韓国に対する北朝鮮の態度緩和の信号と解釈するのは飛躍だ。 しかし変化を誘導することはできる。 コメをやり取りするには南北（韓国・北朝鮮）の赤十字会談が必要となる。 赤十字会談は当局者会談に発展する可能性がある。 １９７０年代初め、歴史的なニクソンの訪中と米中のデタントもピンポン外交で始まった。

李明博（イ・ミョンバク）大統領は‘奥深く賢明な’国民が見守っているため対北朝鮮支援を慎重に決定すると述べた。 李大統領が述べた「国民の４０％が対北朝鮮支援を時期尚早と考えている」という世論調査はどれほど信頼できるだろうか。 その４０％も対北朝鮮支援には共感はすると話した。 大統領は正しい政策に反対する国民を説得しながら推進しなければならない。 コメを与えれば不通の南北関係が開かれる可能性もあるが、与えなければその機会さえも作れない。 北朝鮮は変わらないという考えは、今の南北関係の状況に合わない消極的な態度だ。 機会を能動的に作る必要がある。 韓国は０１年と０６年を除いて００年から０７年まで毎年３０万、４０万、５０万トンのコメを１０年据え置き、２０年償還の条件で北朝鮮に支援した。 北朝鮮は据え置き期間が終わる今年１０月から韓国にコメ代を償還し始めなければならないが、北朝鮮は返す能力がなく、韓国も受けるつもりはない。

米国は対北朝鮮追加制裁を強化し、韓国は天安艦事件の謝罪を対話再開の条件として提示した状況で、対北朝鮮支援の再開は容易でない。 しかし対北朝鮮支援は人道主義レベルを越えて、梗塞した南北関係に突破口を開く大きな機能を果たせるという前向きな考えが重要だ。 時間を長引かせずに決断する必要がある。 今の張り詰めた緊張局面に国民は疲労する。 天安艦に対する謝罪を先にすれば支援をするという立場で相手が難しい場合は、コメを与えて対話しながら謝罪を受けるのが現実的だ。 中国は対話の再開に向けて北朝鮮と韓米ロの説得に動いている。 米国の制裁局面も不動のものではない。 近く水面上に表れてくる対話モードに私たちだけが遅れることはできない。

中国がリードして米国が後続する６カ国協議再開のための交渉過程でも、天安艦の処理問題を議論できるはずだ。

金永煕（キム・ヨンヒ）国際問題大記者



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