彼に会ったのは７月末の北海道だった。 レンタカー会社の職員の彼は、車を返却した私と家族を旭川空港まで送ってくれた。 車の中で彼は私に「韓国の方ですか」と尋ねた。 そして彼は「私も韓国人です。 韓国語は話せませんが、韓国人３世です」と語った。 「一度も韓国に行ったことがない」という彼の韓国名はド・フィテ（都会泰）。 彼の祖父は家族が朝鮮人と言われて差別を受けないか心配になり、日本人に帰化したという。 家庭でも韓国語の使用を禁止したほどだ。 父も母も韓国人だが、彼は徹底的に日本人として育った。 彼は車の中での短い時間に「韓国はどんな国か。 韓流ドラマを作る韓国文化の底力は何か」などと故国に関する質問を繰り返した。 飛行機に向かう私たちの家族を最後まで見送った彼の姿がいまだに頭の中から離れない。

昨年東京で会った５０代のタクシーの運転手、吉池さんもそうだった。 在日韓国人２世の吉池さんの故郷は釜山（プサン）。 亡くなった親の代わりに親せきに会うため時々釜山へ行くが、 いつも寂しい思いをして帰ってくるという。 自分の立場を「ただそこに座っているだけ」と感じているようだった。 ほとんどの在日同胞がそうであるように、吉池さんの親も生活に追われて、子どもに韓国語を教えられなかった。 吉池さんは「幼い頃は自分のルーツや祖国というものに全く関心がなかった」と話した。 しかし今は「親がなぜ自分に韓国語を教えてくれなかったのかと恨むことが多い」と語った。

東京特派員として務めながらいろんな階層の在日同胞に会っている。 医師や弁護士など専門職もいるが、多くはパチンコ店の従業員や親の店を引き継いで商売をしている人たちだ。 容易でない現実に立ち向かって堂々と生きていく彼らの姿に妙な感動を覚えることもある。 風貌に大差はないが、ただ韓国人という理由のために差別と蔑視を受けた在日同胞２・３世は、自分のアイデンティティーを探すのに少なくない葛藤の時間を送ったりしている。 在日本大韓民国民団（民団）が地方参政権を獲得するために力を注いでいる一方で、毎年１万人が日本人に帰化しているのも現実だ。


一つ変化があったとすれば、韓国が経済・社会的に成長したという点だ。 １９９０年代以降、韓流ブームが起こり、韓国文化に対する日本人の視線も大きく変わった。 三星（サムスン）をはじめとする韓国企業の飛躍的な発展も韓国人としての自負心を抱かせた。 今年初め、権哲賢（クォン・チョルヒョン）駐日大使が民団とともに在日同胞２・３世を対象に「国語（韓国語）使用運動」を始めたのは歓迎に値する。 不幸な過去の歴史の犠牲者である在日韓国人が祖国を誇れるよう今は私たちが支援しなければならない。 今週末に東京・六本木で開かれる韓日祭りも、在日韓国人が韓国人としての自負心を感じられるような行事になればいい。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　朴素ヨン（パク・ソヨン）東京特派員



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