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16日晩、ソウル明洞(ミョンドン)のショッピング街にあるL化粧品売り場。日本人観光客のムネオカ・サチエさん(女性、50)が来店し、店員に手に持っていた本を見せる。彼女は本に紹介されているパウダー製品を指しながら「これが欲しい」と注文した。ほかの日本人来店客およそ10人も同じ方法でオーダーした。
同じ時間帯、付近にあるI化粧品の売り場でも似たような場面が見られた。店員のパク・ユミさん(28)は「最近、日本人客が3倍ほど増えている。1冊の本を手に持って来る客が多い」と語った。
日本人客がよく来る北倉洞(ブクチャンドン)の参鶏湯店。店主は「もともと日本人観光客は暑い夏に多かったが、この冬はこれまでになく多い」と語った。やはり「ガイドブックを手にした日本人が多い」という。
この日、記者は明洞を一回りしたが、まるで日本に来ているような感じがした。あちこちから日本語が聞こえてきたからだ。客を引き寄せるために店頭で従業員が「いらっしゃいませ」と叫んでいた。3-5人のグループがショッピングバックを持ったまま、忙しく化粧品店やレストラン、チムジルバン(日本のサウナに相当)などを回っていた。
いずれもウォン安円高が生んだ風景だ。15日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=87円台に迫り、13年ぶりの円高水準となった。日本人にとって絶好の「海外ショッピング」チャンスがやってきたわけだ。最近、明洞が混雑している理由だ。昨年12月に韓国を訪問した日本人観光客は26万人と、前年同月に比べ50%も増えている。
日本人観光客の必需品とされる‘本の正体’は何か。観光客に本を見せてほしいと頼んだ。ほとんどが『IKKOのキレイを磨くin韓国』という本だった。日本で出版されたこのガイドブックには、明洞とソウル市内にある化粧品店、参鶏湯の店、チムジルバンなどが地図、説明、長所・短所とともに詳しく紹介されている。
著者は日本のメイクアップアーティストでタレントのIKKOさん(一幸、47)。女装男性のIKKOさんは、日本人女性にとっては崇拝の対象となっている。92年に「アトリエIKKO」を設立した後、06年に『超オンナ磨き~美のカリスマIKKOの幸せを呼ぶゴールデンルール』を出版し、一躍世間の注目を集めた。
IKKOさんは数年前に韓国の大衆文化に魅了された後、‘韓流の伝導師’になった。本もその延長線で書いたものだが、昨年5月に発表した後、日本でベストセラーになった。明洞でエステティックサロンを運営するイ・ピョンソン社長は「日本のテレビ局とIKKOさんがうちのサロンを紹介して以来、日本人客が急増している。今日予約した2人もIKKOさんの本を見て知ったと話していた」と説明した。
「円高」の後ろでIKKOさんが‘円稼ぎ’をバックアップしてくれているのだ。しかし明洞特需にも陰はある。ある土産専門店のオーナーは「最近の日本人観光客は土産品よりも、普段から考えていたバッグや化粧品、海苔などを買って帰る」と語った。明洞商店街繁栄会のイ・トンヒ事務局長は「5年前にあった‘韓流特需’に続き、不況期にやってきたせっかくの特需」とし「本に紹介されていないほかの店にも多くの日本人顧客を誘致できるように‘親切キャンペーン’などをもっと強化する計画」と話した。
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