「脱北者」を装って8年間にわたり韓国内で活動していた女性スパイが公安当局に摘発され、国家保安法違反などの疑いで逮捕された。これまで諸説があったものの「脱北者を装ったスパイ」の実態が初めて確認されたのだ。この女性は北朝鮮の国家安全保衛部で、韓国に派遣されるための工作教育を正式に受けている。表向きには韓国側との交流と協力を活発に進めながら、裏ではスパイ活動を繰り広げるところから、北朝鮮当局の二重性を確認できる。これは相互信頼を大きく傷つける行為だ。
現役の陸軍将校が北朝鮮側の工作員に抱き込まれ、スパイが韓国軍将兵に安保教育を行う事態は、このところの韓国社会、特に軍内部の安保意識と保安教育がどういうレベルかを表すもので、衝撃を与えている。
女性スパイのA容疑者は01年に偽装脱北後に朝鮮族(中国在住韓国人)を装って韓国人男性と結婚、韓国内に定着した後、北朝鮮保衛部の指示を受けてスパイとして活動した。14回も中国を行き来しながら韓国で収集した情報を北朝鮮側に直接渡したり、有線・無線通信を通じて報告した。北朝鮮も3回も行ってきたという。
合法的な身分と手段を活用して韓国内で活動したのだ。この10年間に摘発されたスパイ事件はたったの1件だった。弛緩した公安当局の捜査・情報力と、国民の安保意識への点検が必要とされる理由だ。脱北者への管理システムも改めて精密に点検しなければならない。約1万2000人にのぼる脱北者のうちA容疑者と類似するケースがないと断言できるだろうか。
しかし政府は、同事件を含む最近の公安事件が「新たな公安政局づくりに向けた政略的な動きだ」とする野党の指摘に留意すべき必要がある。▽昨日警察に摘発された延世(ヨンセ)大教授を含む社労連(社会主義労働者連合)事件▽最近警察が放送通信審議委員会に「親北朝鮮左派が掲示したものを削除すべき」と求める動き――などが、憲法が定めた限度を超えてはならない。
親北朝鮮左派勢力を韓国社会から追い出すという一念から、万が一でも無理な政策や捜査を進めることがあってはならないのだ。人権と自由など基本権自体を侵害してはならないということだ。
正しいことをやっているにもかかわらず、「公安政局」などといった批判を受けることがないようにすべきだ。公安当局はひとまず同事件を起訴する段階で、A容疑者のスパイ容疑を確実に立証付け、こうした憂慮を払拭させねばならない。
大規模なスパイ事件の場合、捜査段階でもっともらしく「包装発表」し、国民と世論を沸き立たせた後、裁判所での判決段階では犯罪容疑が大きく縮小される「歪曲現象」がこれまで少なくなかったからだ。
この際、国家保安法の一部条項への見直しも慎重に検討する必要がある。南北(韓国・北朝鮮)が対立する状況で同法の存続は必要だ。しかし任意的な解釈と適用が可能な一部の条項は憲法精神にふさわしく見直さなければならない。
被疑者に対して機械的に同法を適用したり、純粋な研究活動までが同法で裁断するのは時代の変化や社会通念に外れる。大韓民国の体制維持に向けたスパイなどへの捜査と、思想の自由の保障は、別の法で扱われるのが正しい。
現役の陸軍将校が北朝鮮側の工作員に抱き込まれ、スパイが韓国軍将兵に安保教育を行う事態は、このところの韓国社会、特に軍内部の安保意識と保安教育がどういうレベルかを表すもので、衝撃を与えている。
女性スパイのA容疑者は01年に偽装脱北後に朝鮮族(中国在住韓国人)を装って韓国人男性と結婚、韓国内に定着した後、北朝鮮保衛部の指示を受けてスパイとして活動した。14回も中国を行き来しながら韓国で収集した情報を北朝鮮側に直接渡したり、有線・無線通信を通じて報告した。北朝鮮も3回も行ってきたという。
合法的な身分と手段を活用して韓国内で活動したのだ。この10年間に摘発されたスパイ事件はたったの1件だった。弛緩した公安当局の捜査・情報力と、国民の安保意識への点検が必要とされる理由だ。脱北者への管理システムも改めて精密に点検しなければならない。約1万2000人にのぼる脱北者のうちA容疑者と類似するケースがないと断言できるだろうか。
しかし政府は、同事件を含む最近の公安事件が「新たな公安政局づくりに向けた政略的な動きだ」とする野党の指摘に留意すべき必要がある。▽昨日警察に摘発された延世(ヨンセ)大教授を含む社労連(社会主義労働者連合)事件▽最近警察が放送通信審議委員会に「親北朝鮮左派が掲示したものを削除すべき」と求める動き――などが、憲法が定めた限度を超えてはならない。
親北朝鮮左派勢力を韓国社会から追い出すという一念から、万が一でも無理な政策や捜査を進めることがあってはならないのだ。人権と自由など基本権自体を侵害してはならないということだ。
正しいことをやっているにもかかわらず、「公安政局」などといった批判を受けることがないようにすべきだ。公安当局はひとまず同事件を起訴する段階で、A容疑者のスパイ容疑を確実に立証付け、こうした憂慮を払拭させねばならない。
大規模なスパイ事件の場合、捜査段階でもっともらしく「包装発表」し、国民と世論を沸き立たせた後、裁判所での判決段階では犯罪容疑が大きく縮小される「歪曲現象」がこれまで少なくなかったからだ。
この際、国家保安法の一部条項への見直しも慎重に検討する必要がある。南北(韓国・北朝鮮)が対立する状況で同法の存続は必要だ。しかし任意的な解釈と適用が可能な一部の条項は憲法精神にふさわしく見直さなければならない。
被疑者に対して機械的に同法を適用したり、純粋な研究活動までが同法で裁断するのは時代の変化や社会通念に外れる。大韓民国の体制維持に向けたスパイなどへの捜査と、思想の自由の保障は、別の法で扱われるのが正しい。
この記事を読んで…