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【コラム】「日本スパイ」容疑晴れた脱北エリート…「履き古した草履を捨てるよう」(2)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

無罪判決を受けた脱北者のイ・ユンゴル博士・北朝鮮戦略情報サービスセンター代表。

日本側に提供された文書は北朝鮮関連の国内メディアの報道や専門家の分析などにイ博士が運営する北朝鮮の戦略情報サービスセンターの独自の情報や解説などを加えたものがほとんどだった。特に文書ごとにセンターの英字名称を付けて「NKSIS情勢分析レポート-日本」と明記した。軍事機密を内密に持ち出し日本からお金を受け取り売り渡した文書であれば、提供機関名を明らかにするのはナンセンスだ。統一部から管理・監督を受ける同センターは日本側に情報提供や諮問を行い送金された金額は「情報サービス」などと出所を明らかにしてある。

対北朝鮮情報に関し韓国と日本は2016年11月に締結した軍事情報保護協定(GSOMIA)に基づき緊密な協力関係を維持してきた。協定が明かしている軍事秘密は「当事国が生産または保有している国家安全保障利益上の保護が必要な防衛に関連するすべての情報」だ。韓国の場合、軍事2級秘密と3級秘密が交換できる情報レベルだ。国家安全保障に非常に重要で閲覧も極めて制限される1級秘密を除くすべての情報が交換対象だということだ。

日本側との情報を交わした韓国の情報当局の関係者や日本側の武官、情報要員は問題視せず、唯一脱北者出身のイ博士にだけ拘束起訴という措置を取ったことについて情報関係者の間でも納得がいかないという言葉が出ている。スパイ行為をしたことで検察が控訴状で名前を挙げた日本の永島透武官は、事件が表面化した後も勤務し、6月に任期を終えて出国した。


裁判の過程で「証拠」として提示された検察側の資料により国家情報院が脱北関係者の継続的な査察と尾行を行った事実も明らかになった。国家情報院はイ博士が2017年3月14日に永島武官に会うためにソウル市内のある食堂に入る姿を密かに撮影した。また、2015年5月には他の日本側の関係者に会う姿を撮影した。イ博士側は「少なくとも4年前から継続的に私の監視と尾行が行われたということを国家情報院が自ら認めたもの」とした。国家情報院側は「日本側の関係者を監視しただけ」と釈明している。

北朝鮮の金正恩政権が露出することを敬遠する機密内部情報を入手し公開したから口止めしようとする意図だという脱北者社会の声もある。実際、イ博士は昨年5月に中国遼寧省丹東市東江地域の海上で、北朝鮮の船舶清流1号が中国側のテンダーボートから油類を違法積み替え(瀬取り)する場面を写した写真を入手し、政府当局者に伝えた。この船は北朝鮮の人民武力省所属の赤い星貿易総会社の管轄だ。国連の対北制裁委が北朝鮮の油類の瀬取りを本格的に問題視する前だ。キム・ウォンホン元国家安全保衛部長が権力の実勢だった時にその息子キム・チョルが代表を務める朝鮮チョンボン貿易が中国側と北朝鮮人材の第3国送出に合意した秘密契約書もイ博士は公開した。金正恩委員長の統治資金や一家の事情を含む情報が相次ぎ政府当局が困惑する雰囲気を感じ取ったという。

通常「脱北者スパイ」の場合、過去には政府で公安当局の降圧捜査の論争の形で浮き彫りになった。民主と人権を標榜する現政府では1人のエリート脱北者に「日本のスパイ」との疑いがかけられた。あいにく政府が南北首脳会談や交流、制裁解除に没頭する時期だった。「手段・方法問わず北朝鮮情報収集をやらせたら、今度は履き古した草履を捨てるようだ」というイ・ユンゴル博士の訴えかけは、政権によって揺れる大韓民国の対北朝鮮と外交安保政策の現状を見せている。

イ・ヨンジョン/統一北朝鮮専門記者兼統一文化研究所長



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