最低賃金の引き上げは文在寅(ムン・ジェイン)政権が推進する「所得主導成長」の核心にあたる。低賃金勤労者の所得を増やして所得の不平等を改善するという政策だ。果たして意図した成果が出ていると評価できるだろうか。統計的実証を通じて確認してみよう。
まず、最低賃金水準だ。最低賃金が全体勤労者の賃金順位で真ん中にある「中位賃金」の何%に該当するかを経済協力開発機構(OECD)国家と比較してみた。韓国は2000年に30%にもならなかったが、速いペースで上昇して現在はその倍だ。特に文政権発足後の2018年に最低賃金が16.4%、2019年に10.9%急騰して8350ウォンまで上がり、今年はOECDで最も高いフランスの水準に達したと推定される。
こうした急激な上昇は経済にどんな衝撃を及ぼしたのだろうか。まず、中下位勤労者の賃金を引き上げるのに寄与したと評価できる。時給が下位10%と25%に該当する勤労者の賃金が中位賃金の何%かを見ればよい。これによると、過去10年間、下位10%に位置する勤労者の時給は中位賃金の47%から58%に、下位25%は中位賃金の65%から76%にそれぞれ高まり、中位賃金との差が縮まった。
中位賃金の3分の2に達しない場合を低賃金勤労者と定義すると、その比率は26%から19%に減少した。特に最近の大きな下落幅が注目される。現政権はこうした事実を挙げて最低賃金引き上げの効果が本格的に表れ始めたと評価している。ところが、これら統計は雇用を維持している勤労者に限定されている。職場を失って淘汰された勤労者はここに含まれなかったという点に留意する必要がある。
2つ目、最低賃金の施行で賃金が上がれば、雇い主は雇用や勤労時間の縮小に入ると予想できる。実際にそうなったのだろうか。そうなった場合、どの程度か。統計庁の「地域別雇用調査」(2008-18年)を分析したところ、最低賃金引き上げは統計的に雇用を減少させていた。最低賃金を1%引き上げれば雇用を0.05%減らすと推定された。勤労者数が2000万人であるため、最低賃金1%引き上げは1万人の雇用を減らすということだ。2018年は最低賃金引き上げ率が16.4%だったため16万人が消えたということだ。毎年30万人ほど増加してきた就業者数が昨年は10万人にも達しなかった理由だ。今年はまた10万人ほど減ると予想される。
こうした推定は2008-12年と2013-2018年に期間を分けると可能だ。最低賃金引き上げの雇用効果が前の時期には微弱である半面、最近は雇用と勤労時間を減少させる効果が目立った。しかも低賃金勤労者が相対的に多い青年または高齢層や臨時・日雇い勤労者に限定すると、最低賃金がこうした層の時給を引き上げる効果はむしろ低かった。最低賃金を遵守しないケースが多いからだ。
3つ目、所得分配にはどんな影響を及ぼしたのか。最低賃金引き上げの恩恵を受けた勤労者がいる一方、時給上昇が勤労時間の減少で相殺されたケースもあり、職場を失って淘汰されたケースもある。雇用を維持した勤労者に限定すると格差は減少したが、全世帯を対象にすると話は変わる。世帯を所得順に5分位に分け、勤労所得(名目)の増減率を比較すれば分かる。
これによると、2015年までは勤労所得増加率は分位別に差が大きくなかった。2010年ごろには下位分位の増加率がより大きかった。しかし2016年以降は完全に逆転し、上位分位の増加とは対照的に下位分位になるほど勤労所得の減少幅が拡大したことが分かった。単に景気が悪化して賃金が減ったのなら分位別にこうした差は生じない。雇用減少の衝撃が下位分位に集中したことを意味する。事業所得の変化も勤労所得と似ていた。すなわちこの3年間に1、2分位の事業所得がともに大幅に減少したが、最低賃金引き上げで中小自営業者の所得が減少、または一部が淘汰されたことを表している。
最低賃金1%上げれば雇用1万件消える=韓国(2)
まず、最低賃金水準だ。最低賃金が全体勤労者の賃金順位で真ん中にある「中位賃金」の何%に該当するかを経済協力開発機構(OECD)国家と比較してみた。韓国は2000年に30%にもならなかったが、速いペースで上昇して現在はその倍だ。特に文政権発足後の2018年に最低賃金が16.4%、2019年に10.9%急騰して8350ウォンまで上がり、今年はOECDで最も高いフランスの水準に達したと推定される。
こうした急激な上昇は経済にどんな衝撃を及ぼしたのだろうか。まず、中下位勤労者の賃金を引き上げるのに寄与したと評価できる。時給が下位10%と25%に該当する勤労者の賃金が中位賃金の何%かを見ればよい。これによると、過去10年間、下位10%に位置する勤労者の時給は中位賃金の47%から58%に、下位25%は中位賃金の65%から76%にそれぞれ高まり、中位賃金との差が縮まった。
中位賃金の3分の2に達しない場合を低賃金勤労者と定義すると、その比率は26%から19%に減少した。特に最近の大きな下落幅が注目される。現政権はこうした事実を挙げて最低賃金引き上げの効果が本格的に表れ始めたと評価している。ところが、これら統計は雇用を維持している勤労者に限定されている。職場を失って淘汰された勤労者はここに含まれなかったという点に留意する必要がある。
2つ目、最低賃金の施行で賃金が上がれば、雇い主は雇用や勤労時間の縮小に入ると予想できる。実際にそうなったのだろうか。そうなった場合、どの程度か。統計庁の「地域別雇用調査」(2008-18年)を分析したところ、最低賃金引き上げは統計的に雇用を減少させていた。最低賃金を1%引き上げれば雇用を0.05%減らすと推定された。勤労者数が2000万人であるため、最低賃金1%引き上げは1万人の雇用を減らすということだ。2018年は最低賃金引き上げ率が16.4%だったため16万人が消えたということだ。毎年30万人ほど増加してきた就業者数が昨年は10万人にも達しなかった理由だ。今年はまた10万人ほど減ると予想される。
こうした推定は2008-12年と2013-2018年に期間を分けると可能だ。最低賃金引き上げの雇用効果が前の時期には微弱である半面、最近は雇用と勤労時間を減少させる効果が目立った。しかも低賃金勤労者が相対的に多い青年または高齢層や臨時・日雇い勤労者に限定すると、最低賃金がこうした層の時給を引き上げる効果はむしろ低かった。最低賃金を遵守しないケースが多いからだ。
3つ目、所得分配にはどんな影響を及ぼしたのか。最低賃金引き上げの恩恵を受けた勤労者がいる一方、時給上昇が勤労時間の減少で相殺されたケースもあり、職場を失って淘汰されたケースもある。雇用を維持した勤労者に限定すると格差は減少したが、全世帯を対象にすると話は変わる。世帯を所得順に5分位に分け、勤労所得(名目)の増減率を比較すれば分かる。
これによると、2015年までは勤労所得増加率は分位別に差が大きくなかった。2010年ごろには下位分位の増加率がより大きかった。しかし2016年以降は完全に逆転し、上位分位の増加とは対照的に下位分位になるほど勤労所得の減少幅が拡大したことが分かった。単に景気が悪化して賃金が減ったのなら分位別にこうした差は生じない。雇用減少の衝撃が下位分位に集中したことを意味する。事業所得の変化も勤労所得と似ていた。すなわちこの3年間に1、2分位の事業所得がともに大幅に減少したが、最低賃金引き上げで中小自営業者の所得が減少、または一部が淘汰されたことを表している。
最低賃金1%上げれば雇用1万件消える=韓国(2)
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