北朝鮮は通常の国とは違い、南北分断と首領体制によって国家、体制、政権の安全保障が一体化した。したがっていかなる脅威にも政治的に非常に過度に、また硬直した形で反応する。さらに食うか食われるかのゼロサム競争関係にある韓国の国力が５０倍も大きく、最大敵国の米国は世界最高軍事強国だ。核専門家は南北間、米朝間の敵対関係によって発生したこうした北朝鮮の脅威認識が核武装の核心原因と指摘する。

ここに、なぜ過去の北核合意がいつも破られたかに対する答えがある。北朝鮮の長期的生存に対する根本的な安全保障上の不安が解消されていないからだ。説得と制裁、経済的補償で北核問題を解決しようとする我々の戦略は本質的な限界がある。北朝鮮は強い制裁圧力に直面すれば、当面の危機と経済危機を免れるために核合意に動く。しかし北朝鮮は安全保障上の不安のために非核化できない。結局は核合意を違反して核開発を再開する悪循環が繰り返される。

２０１８年３月に鄭義溶（チョン・ウィヨン）特使が北朝鮮訪問後、「軍事的な脅威が解消されて北の体制の安全が保証されるなら核を保有する理由はない」という金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長のメッセージを伝えた。ここから我々は金委員長本人もこうした核武装と核放棄の本質をよく理解していることを把握できる。ハノイで核合意に至らなかった後、李英浩 （イ・ヨンホ）北朝鮮外相が夜間の緊急記者会見で「より重要な相応措置は安全担保問題」と述べ、安全保障の相応措置の重要性を再確認した。


ところが脅威が解消されたとして自ずと核を放棄するのではない。核放棄は必ず政治指導者の政治的な決断があってこそ可能だ。核開発と核放棄はあたかも戦争の開始と終了のように重大な政治的決定であり、政治指導者だけができる。過去の朴正熙（パク・ジョンヒ）大統領も米国の圧力と安全保障公約で核放棄を決めた。デクラーク南アフリカ大統領とナザルバエフ・カザフスタン大統領の核放棄決定も有名だ。もし彼らが核を放棄する政治的決定をしなかったとすれば核武装を持続した可能性が高い。

幸い、２０１８年に入って文在寅大統領、トランプ大統領、金正恩委員長の３人の偶然な組み合わせが形成され、非核・平和のための新たな機会が開かれた。初めて南・北・米の政治指導者が「完全な非核化を通じた核のない韓半島」目標に合意した。このように政治指導者が非核化目標を確認したのは非常に大きい。

今後、北朝鮮非核化の実質的な進展に向けて、我々は難しくても北朝鮮の安全保障問題を直視して実質的な案を提示することが求められる。特に非核化は首脳の決定が必要な重大な安全保障事案だという点を認識し、ようやく出てきた南・北・米首脳の合意を最大限に活用しなければいけない。



【韓半島平和ウォッチ】非核化実現に向けて北朝鮮に安全保障案の提示を＝韓国（１）