ハリウッド女優シドニー・スウィーニーが出演した米国のアパレルブランド「アメリカンイーグル」のジーンズ広告の一場面。壁に書かれた「Genes」という文字をめぐって、米国の進歩(リベラル)陣営からは優生学への懸念が出ているが、保守派は「過剰な解釈」だと反論している。[アメリカンイーグル公式YouTube キャプチャー]
ハリウッド女優シドニー・スウィーニー(27)が出演した、米国アパレルブランド「アメリカンイーグル」のジーンズ広告が、米国社会を二分している。広告では、発音の似ている「jeans(ジーンズ)」と「genes(遺伝子)」をかけた言葉遊びが用いられている。映像では、スウィーニーがジーンズをはいているシーンにあわせて、「ジーンズは親から受け継がれるもの」、「ときに髪の色、瞳の色、性格まで決める」というナレーションが流れる。最後はスウィーニーの青い瞳がクローズアップされ、「私のジーンズは青い」という文句で締めくくられる。別の広告では、スウィーニーが壁に書かれた「Great Genes」の「Genes」に線を引き、「Jeans」と書き直す場面も登場する。
AP通信は「意図的であるか否かにかかわらず、優生学への暗示と受け取られる可能性がある」と指摘した。優生学とは、特定の遺伝的特徴によって人間を選別・改良しようとする理論だ。ミシガン大学経営大学院のマーカス・コリンズ教授は、「広告に多様な人種のモデルが登場していれば、こうした『遺伝子』をめぐる言葉遊びへの非難を避けられたかもしれない」とした上で、「無知だったか、怠慢だったか、あるいは意図的だったか」と批判した。CNNは、昨年ドナルド・トランプ大統領が、犯罪を犯した不法移民に対して「悪い遺伝子を持っている」と発言したことを思い出させると指摘した。
反応は爆発的だった。7月23日(現地時間)にYouTubeで公開されたこの広告映像は、10日間で再生回数400万回を超え、コメントは1万1000件以上に達した。コメントの大半は、この広告が人種差別的かどうかをめぐる議論だ。
トランプ氏もこの論争を見逃さなかった。1日、メディアのインタビューでジーンズ広告に関する質問を受けると、「バドライト」ビールの広告を引き合いに出し、「史上最悪の災害であり、最も失敗した広告だ」と強調した。トランスジェンダーのインフルエンサーがバドライトの協賛を受けたこの広告をきっかけに、保守層を中心に不買運動が広がっていた。スウィーニーの広告については多くを語らなかったが、「ポリティカル・コレクトネス(PC、政治的正しさ)」に偏った広告への批判を通じて、間接的に立場を表明した形だ。
保守層からは、今回の論争がPC主義に基づく過剰反応だという反発が強まっている。特にスウィーニーが共和党員として登録されているとの報道が出ると、彼女を擁護しようとする雰囲気が高まった。元FOXニュース司会者のメーガン・ケリー氏はX(旧ツイッター)で「左派の過剰反応が、かえって美しい金髪女性への関心を高めてしまった」と皮肉った。ホワイトハウスのスティーブン・チョン広報部長も「ジーンズ広告から『白人優越主義』を読み取ること自体がどれだけ愚かなことかを示している」とし「こうしたとんでもない攻撃こそ、トランプ氏が再選に成功した理由だ」と主張した。J・D・バンス副大統領も「民主党は、シドニー・スウィーニーを美しいと感じる人々をナチス扱いしている」と皮肉った。英紙インディペンデントは、「保守陣営が文化論争を戦略的に活用している」と分析した。
アパレル業界は、米国を文化論争の渦中に巻き込んだアメリカンイーグルを最終的な勝者と見ている。アメリカンイーグルは、今年2~~4月期の売上高が前年同期比で5%減少し苦戦していたが、スウィーニーをモデルに起用した後、株価が4%以上上昇した。
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