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【コラム】プーチンの頭の中の世界

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

プーチン露大統領

いったいどんな考えをすれば21世紀にこのような無謀な侵略戦争を起こすことができるだろうか。1年前にロシアのプーチン大統領が始めたウクライナ侵攻の話だ。ニューヨーク・タイムズのウクライナ戦争企画報道でプーチンの頭の中を類推するのに役立つ部分を探した。

「プーチンは16カ月間西欧の指導者らとただの一度も直接対面しなかった。代わりにどこかわからないミステリーな場所でオンライン会談だけした」。また別の一節。「プーチンに会う人たちはまず3日間隔離した後、15フィートの距離を置いて対面できた」。プーチンが対面接触に鋭敏だったのは新型コロナウイルスのためとみられる。

自発的であれ強要されたのであれ孤立は代償を要求する。孤立は歪曲された信頼の螺旋効果を強化する。外部との疎通を避けるほど自分たちだけの世界がすべてになり、自分の信じるものだけがさらに真理になり偏見と意地が螺旋のように頭の中に食い込む。反対に外側では門番権力が政事を思うままにして公式システムを跳び超える。


孤立を選択したプーチンが頭の中に作った世界、これを「プーチンユニバース」と称するならば、その最初の柱は「外部の脅威」だった。プーチンはウクライナ侵攻を半年ほど控えた2021年7月に発表した『ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について』という論文で、ウクライナで「反ロシアプロジェクトが進行中」と主張した。「ウクライナ国内のロシア人がルーツと先祖を否定しロシアを敵と考えるよう強要されている」と憤怒した。彼はウクライナのNATO加盟を西欧の包囲と考えた。

彼の2番目の柱は「純潔なわれわれ」だ。プーチンは同じ論文でロシアとウクライナとの関係を「精神的つながり」と描写した。「われわれの精神的一体性が攻撃を受けている」と規定した。これに対し彼に西欧は道徳的に混濁した。「男女平等政治により母親と父親が『親1』と『親2』に代替された」というのがプーチンがしばしば取り上げた西欧批判だった(NYT)。

プーチンユニバースの3番目の柱は義を重んじた戦争だ。外側の悪の勢力に対抗し精神的なつながりを守る聖戦だ。プーチンは旧ソ連が悪の勢力「ナチスドイツ」と戦争をしたとすればいまはウクライナを飲み込もうとするネオナチと戦わなければならないという論理を作った。彼は論文で「急進主義者らとネオナチがますます無礼に野心を表わしている。官僚組織と地域土豪が彼らを保護している」と主張した。

2021年10月にイスラエルのベネット首相(当時)がプーチンと会い、ウクライナのゼレンスキー大統領がプーチンとの会談に関心があるという話を切り出したという。するとプーチンは「この人と話す言葉はない。ゼレンスキーはいったいどんなユダヤ人なのか。この人はナチスの助力者」(NYT)と非難した。ユダヤ人であるゼレンスキーがユダヤ人の敵であるナチスに附逆するとは理解できないという憤怒が込められている。だがゼレンスキーが「ユダヤ人ナチス附逆者」なのか。

こうして見ると、プーチンの世界はハリウッドアクション映画やSF映画を思い起こさせる。善良な私たちと悪党という二分法の中で悪党追放に向けた対決の構図だ。だが現実は複雑系で見る位置によって見える像が変わる。「東欧に1インチも拡張しない」という西欧の約束が旧ソ連衛星国のNATO加盟で破られているのは事実だが、西欧の東進は根本的に「ロシアクラブ」より「西欧クラブ」がより魅力的なので広がっているものだ。

政治で最も危険なことはスターウォーズリーダーシップだ。世界を不正な帝国軍と苦痛を受ける抵抗軍に分けた後に無法的で堕落した者を振り払って正義を実現しようというリーダーシップは現実を分かつ盲目的支持を量産したりする。善と悪、純潔と堕落は絶対者である神と不完全な自分との関係で追求する信仰の領域に残しておかなければならない。

プーチンと追従者にウクライナ侵攻は荘厳な戦争かもしれないが世界はこれによって苦痛を受け試験を受けている。ウクライナ侵攻でロシアが得るものがあるのかも不透明だ。ロシアが地上軍を動員してウクライナの首都まで進撃したのに反ロシア政権が健在な状態で戦争が終わる場合、ロシアの失敗だ。

その上ロシアがウクライナで後ろ盾である米国と戦争しながら国力を注ぎ込んだがその戦いの利益を中国が取る可能性が出ている。苦労はロシアがして利益は中国が得るというケースだ。ロシアのウクライナ侵攻で台湾侵攻の名分を作った中国が欧州で力を投射し気力がなくなった米国を相手に両岸で正面対決を行うシナリオだ。

チェ・ビョンゴン/国際外交安保ディレクター



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