日本の2011~2016年のPM2.5の平均濃度。日本西側の長崎地域の汚染度が高いことが分かる。[写真 remote sensing、2021]
中国発PM2.5が飛来するとき長崎地域の小児喘息患者の症状が悪化するという研究結果が発表された。このような研究結果は中国と日本の間に位置する韓国にも当てはまり、目を引いている。
東京大学と長崎大学、韓国のソウル大学とKAIST(韓国科学技術院)などの研究チームは衛生保健分野の国際ジャーナル『Environmental Health』に「PM2.5化学成分に関連した日本長崎地域の小児喘息患者の呼吸機能低下」と題する論文を10月に発表した。
研究チームは2014~2016年、長崎県長崎市と諫早市に住む小児喘息患者73人を選定して実験を行った。研究チームは小児喘息患者の保護者に要請して最大呼気流量(peak expiratory flow,PEF)を毎朝・夕方の2回、自宅測定してもらった。
PEFは空気を最大限吸い込んだ後に力いっぱい吐きだして測定する最大空気流量のことを指す。小児気管支喘息患者の診断や気道閉塞の程度を知るために基本的に使用する検査だ。研究チームはこれとあわせて2つの都市の大気中のPM2.5汚染度と成分も調査した。
調査期間中、長崎市のPM2.5汚染度平均値は立方メートルあたり16.2マイクログラム(1マイクログラム=100万分の1グラム)で、諫早市の汚染度は平均17.7マイクログラムだった。日本の年間環境基準分の15マイクログラムを若干上回る水準だった。
研究チームは長崎市の小児喘息患者の場合、PM2.5の成分のうち、硫酸塩とアンモニウムが多ければ翌日夕方に測定したPEFが減少することを確認した。また、硫酸塩が多ければ翌朝に測定したPEFも減少した。諫早市ではPM2.5成分のうち有機炭素(OC)の濃度が高いと翌朝PEFが減った。
研究チームはPM2.5の汚染原因を把握するために、すなわち汚染された空気がどこから流入してきたかを知るために逆軌跡分析を行った。分析の結果、長崎市では工場地帯である中国東北部から始まった軌跡が非常に優勢で(41%)、その後地域汚染の影響(40%)を多く受けることが明らかになった。これとは異なり、諫早市では中国東北部から始まった軌跡の寄与度は13%水準であり、地域汚染が占める比率が47%で支配的だった。
研究チームは「2都市で他の結果が出たのは、PM2.5分析日で同一ではなく、黄砂の観測日数で違いがあったためではないか」と説明している。また、長崎市は西側海に面しているが、諫早市はやや東側に位置して山脈で囲まれているため、違いが生じた可能性があるという。
研究チームは「今回の研究はPM2.5成分が子どもたちの肺機能に差別化された影響を与えるという証拠を提示した」としながら「喘息がある子どもはPM2.5が高い日には野外活動を減らすなど健康負担を減らすための措置が必要だ」と指摘した。
研究チームはまた「長距離移動、越境性(Transboundary)大気汚染物質に対する認識を高め、脆弱階層を大気汚染から守るための東アジア国際共同研究が必要」と強調した。
一方、中国の現在の大気汚染水準はこの研究が行われた2014~2016年に比べて非常に改善されたという。これに伴い、現在の長崎状況とは異なる可能性もある。
だが、過去に日本まで影響が及んだという点で、中国の大気汚染が改善されたとは言っても、距離的に近い韓国には今でも影響を与えている可能性があることから、韓国でもこのような研究が必要ではないかとみられる。
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