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<取材日記>あきれる農心の危機対処

1982年の米国シカゴ。 誰かがカプセル型鎮痛剤に致死量の毒劇物を入れた。 これによって7人が死亡した。 製造過程のミスでないことは明らかだったが、会社代表がすぐに公開謝罪した。 すべての製品を回収したのはもちろん、生産も中断した。 数百万ドルを投じて設備を整え、カプセルの代わりに安全な錠剤の薬を作り始めた。

北米鎮痛剤市場の35%を占めるタイレノールの話だ。 毒劇物事件はタイレノールとこれを作ったジョンソン・エンド・ジョンソンの地位をむしろ高めた。 「ジョンソン・エンド・ジョンソンは責任を取って問題を解決する企業」という信頼も生まれた。 この事件は25年が過ぎた現在でも企業危機管理の模範答案として広く知られている。

2008年のソウル。 スナック菓子「セウカン」の袋からネズミの頭が出てきた。 消費者の申告に対し、会社側はラーメン3箱、現金50万ウォン(約5万円)で口止めを図った。 1カ月間、製品を回収するどころか、当局にも申告しなかった。 食品医薬品安全庁が調査に入ると、慌てて製品を回収し、謝罪文を発表した。


「農心(ノンシム)は信じられない」という消費者とネチズンの声は行き過ぎたものだろうか。 農心が釈明したように、製造工程では異質物が入っていなかった可能性もある。 誰かが悪意でこれを入れたとすれば、農心だけの責任にされるのは納得しがたいだろう。 だが大勢の人々を衝撃に陥れたのはネズミの頭だけではない。 ラーメン市場の70%以上を占める国内2位の食品企業の無責任な態度だ。 農心がこの程度なら他の企業はどうか。 生産現場の衛生はどうか、口止めで済まされた食品事故はどれほど多いだろうかなどと想像し、不信の眼差しはセウカンだけでなく、農心の全製品、さらにはすべての加工食品に広がっているのだ。

農心は危機管理の基本を守れなかった。 タイレノールのケースのように‘私のせいです’と言いながら消費者に頭を下げ、原産地表示問題など再発防止対策を出すべきだった。

1989年に工業用油捜査から始まった波紋は三養(サムヤン)食品を倒産直前にまで追い込んだ。 結局は無罪となったが、世論が背を向けた後だった。 ラーメン市場1位の農心が、危機と民心管理にこれほど脆弱だったというのは残念でならない。 製品の安全性が何よりも重要な食品業界には、今回の事件を自己点検のきっかけにしてほしい。



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