◇終わらない米ロの葛藤

Ｆ／Ａ－１８は、ＴＵ－９５が空母をレーダーで照準するなど交戦規則を充足した場合、直ちにミサイルを発射して撃墜する態勢を備え、監視飛行を続けた。 遠距離から空母を攻撃できる爆撃機を制御するには、攻撃態勢を完備してずっと追いかけるしかないのだ。 これ以上接近するなという警告を送ったが、応答はなかった。

ロシア爆撃機は「ニミッツ」に９０キロまで接近した後、次の段階に入った。 １機は「ニミッツ」に接近し、別の１機は旋回したのだ。 １機は６１０メートルの低高度飛行で「ニミッツ」に近づいた。 レーザーで母艦を照準するなど、敵対行動を見せなかったため、ひとまず撃墜命令は下されなかった。


ＴＵ－９５は「ニミッツ」甲板上空を通過した。 そのまま過ぎ去っていくかと思われたが、旋回した。 米海軍の操縦士の手に汗がにじむ。 ＴＵ－９５はまた「ニミッツ」甲板を通過した。 もう一度接近すれば発砲するという警告を送ったが、またも応答はなかった。 別の１機の爆撃機は９０キロほど離れたところで旋回を続けていた。

過去、キティホーク上空をこのように通過したＴＵ－９５は、空から母艦の写真を撮影し、これを電子メールでキティホークに送った。 米海軍を挑発するのだ。

「ニミッツ」甲板を２度通過したＴＵ－９５は、同僚がいる上空のほうへ向かった。 ２機の爆撃機は北東に方向を変えて飛んでいった。 サハリン上空を通り、ウラル山脈を越えて基地に戻ったのだ。 挑発は終わったが、両国の葛藤はいつ終わるのか分からない。

ＴＵ－９５がサハリンの向こうに消え、マナジール艦長はトイレへ行った。 そして艦橋にいる部下将校らに冗談を言った。 「あのロシア爆撃機操縦士はあと何時間ぐらい我慢しなければいけないだろうか」。将校が一斉に笑った。

冷戦時代に開発されたＴＵ－９５には皮肉にもトイレがない。 今後、一部の装備が電子化すれば、空間を確保する計画もある。 それまでは２人の操縦士を含む７人の乗務員は我慢するか、もらすしかない。 それが米国とロシアの力と人間に対する考え方の根本的な差ではないか。

▶　「敵の爆撃機２機が母艦に突進する」　露ツポレフ９５が日本の海上で挑発…①

▶　「敵の爆撃機２機が母艦に突進する」　露ツポレフ９５が日本の海上で挑発…②