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うつ病(憂うつ症)に陥り若き時代に世を去った多数の天才芸術家のため、うつ病にはロマンチックの神話がやどった。「心の風邪」に例えられたりもする。かかっても軽く済む一時的症状だということだ。
精神医学者ピーター・クレイマー氏は『驚異の脳内薬品-欝に勝つ』という著書で、こうした社会的な諸認識を批判する。とりわけ、うつ病を創造性と感受性の源泉に見なす態度を攻撃する。同氏によると、うつ病についての錯覚は左右を問わない。左派的観点から、うつ病は、商業資本主義に反対する消極的抵抗ぐらいに見なされる。
右派は、心理治療や薬品治療などといった楽な処方に頼らず困難に勝ち抜くように、と強調する。いずれもうつ病を病気というよりは、人格的・道徳的・美的・知的属性に見なす、とのことだ。うつ病をこのように「病気以上」あるいは「病気以下」に見なす諸認識がうつ病の積極的な治療を防ぐ、と同氏は強調する。
うつ病はすでに個人的な病気だけではなく、社会的病気でもある。特に、経済的な豊かさと社会的な挫折に伴われる先進国型・資本主義型の病気だ。生活問題が解決された後にやってくる精神的むなしさでもあり、激しい競争システムで挫折した人々に表れる精神的特質でもある。世界保健機関(WHO)はすでに、21世紀に人類を困らせる主要病気にうつ病を挙げている。
2020年にはすべての年齢で表れる疾患のトップになるだろう、と警告したりもした。『驚異の脳内薬品-欝に勝つ』は、米職場のうつ病関連費用が年間400億ドルが上回るものと見込んでいる。国民総生産の3%にあたる数値だ。『進行逆説』という本によると、米国と欧州の単極性うつ病(躁病のない憂鬱症)患者はこの50年間10倍も増えた。
権力エリートとメディア・エンターテイメント産業が、存在を証明でもするかのように絶えず危機感を助長し、不安心理を広がせたことが主な要因だ。うつ病の深刻性は韓国も同様である。06年に統計庁が行った社会統計調査によると、韓国民10人に1人が自殺の衝動に苦しめられている。
毎年自殺者数が1万人を越え、経済協力開発機構(OECD)加盟諸国のうち自殺率第1位の座を数年間維持している。おりしも江華島(カンファド)武器奪取事件のチョ某容疑者も、うつ病の治療を受けてきた模様だ。犯罪に関連した釈然としない点のため、うつ病の前歴をチョ容疑者が膨らませているとの疑惑もある。
だが、明らかなのはうつ病が順次、他人に対する無差別的犯罪の主な原因に浮上しているとの点だ。個人だけでなく社会的健康のためにも、うつ病に対する社会的関心が必要だ。
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