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日本の地方都市や田舎には、村の中心部に高い望楼が設置されているところが多い。 望楼のてっぺんには必ず小さな鐘が一つ吊るされている。 「半鐘」と呼ばれるこの鐘の元々の用途は火災警報用だ。 木造家屋で暮らしてきた日本人にとって、火災は最も恐れるものの一つだった。 住民は自律的に消防団をつくって望楼に上がり、24時間監視体制を稼働した。 現代式消防制度の導入で望楼と半鐘の役割を119申告とサイレンが果たすことになり、現在では地域の象徴物として役割が変わった。
「半鐘泥棒」という日本語がある。 言葉どおりなら鐘を盗む泥棒だが、辞書によると「望楼上の鐘をも盗めるほど背が高い人」という言葉だ。 実際に背が高いかどうかは知らないが、最近、言葉どおりの半鐘泥棒が日本のあちこちで出没している。 東京の北側の茨城県内だけでも今年に入って40個余があとかたもなく消えた。 5-10メートルの高さの望楼に吊られた数十キロの青銅製の鐘をとっていく手法には舌打ちするしかない。
これだけはない。 エアコンの室外機、登山路の鎖、道路のガードレール、下水道の金網など金になる金属はすべて泥棒の標的だ。 首都圏地域の埼玉県では公園の滑り台の鉄板が消え、階段だけがぽつんと残った。 神奈川県の山間地域では公衆トイレの屋根が丸ごとなくなった。 工事現場の鉄筋・電線を盗む古典的な手法はあまりにも奇抜で大胆だ。
泥棒が金属を狙う理由は鉄・銅など金属類の価格が急騰したからだ。 日本リサイクル工業会によると、屑鉄の価格は5年前に比べて5倍に上がった。 国際市場で取引される銅の価格も2001年の4倍と過去最高価格だ。 最も大きな原因は北京オリンピックと上海エキスポを控えている中国の建設ブームにある。 消えた半鐘の最終行先地も中国だと日本業界は推定している。
鉄泥棒は取り締まれば徐々になくなっていくはずだ。 もっと大きな問題は別にある。 金属資源は枯渇に向かっているのに対し、需要は急速に増えているのが現実だ。 金・銀・亜鉛・錫などは今後15年以内に現在の埋蔵量が底をつくという。 他の金属も無限資源ではないため、結局、廃金属類を溶かしてリサイクルする方法しかない。 供出報国という名目の下、寺の鐘はもちろん食器までも出さなければならなかった日本の植民地時代よりもっと深刻な鉄騒動が、遠からず現実になるのかもしれない。
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