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息詰まる20秒間の胴体着陸ドラマだった。
乗客56人と乗務員4人だけではなく日本列島の全国民が手に汗を握った。13日午前、全日本空輸(ANA)旅客機1603便が 前脚の着陸装置の故障で 前脚が出ないまま日本の南西部高知空港に胴体着陸を試みた場面は、午前10時からNHKなどすべてのチャンネルを通じて生放送で流れた。
1603便ボンバルディアにDHC-8Q400旅客機は、この日午前、大阪伊丹空港を出発し、午前8時50分、高知空港に到着する予定だった。
しかし着陸態勢に入った瞬間、機長(36)は重大な故障を発見した。後脚は出たが前脚がまったく出なかったのだ。8時49分、管制塔に「前脚が出ない」という連絡を送った。管制塔からは「タイヤは出ているのに機内から認知できなかったということもあるので、いったん滑走路の上を低空飛行するよう」指示が伝わった。
午前9時17分、低空飛行をしたがやはり前脚は出ない状態だった。機長はひとまず上空を旋回することにした。上空旋回は1時間以上だった。機内がざわめき始めた。不安に思う乗客に機長が機内放送をした。
「皆様、前脚が出ないため旋回していますが、もし胴体着陸をすることになりましても普段訓練をしておりますので問題ありません。ご安心ください」
機内はまた落ち着きを取り戻した。機長は10時26分、第1次着陸を敢行した。「後脚の着陸の衝撃でもし前脚が(自ら)出るかもしれない」と考えた。着陸敢行。しかし結果は同じだった。前脚は出ずに旅客機はまた上空に再上昇した。胴体着陸しかなかった。
上空を旋回しながら機長は非常着陸時、万一発生するかもしれない火災に備えて旅客機の中の燃料の大部分を海に捨てた。機内にはまた恐怖が近づいた。一部の乗客はメモ紙や名刺の裏に家族に残す文や機内の状況を書き始めた。消防車数十台と救急車のサイレンが響き、自衛隊要員まで緊急出動、滑走路わきに待機した。搭乗客を迎えに来た親戚や知人たちはそこで非常事態であることを知り、空港ターミナルで涙を流しながら祈っていた。弟を待っていたある女性(52)は「どうか無事で…」と涙声だった。
しかし機長は冷静だった。10時50分。「これから10分の燃料しかありません。胴体着陸を試みます。もう一度申し上げますが私は(こうした状況に備えて)多くの訓練をしてきました。安心してください」乗客たちは冷静さを取り戻した。乗務員たちの指示に従って前の席と後席に集中して座り、両手で頭をかかえて姿勢を低くした。
午前10時54分。1603便の後脚が滑走路に着いた。白い煙が上がったが、機首は上に向いた状態だった。そして10秒後、ついに機首が滑走路に下りた。
「ド、ド、ドン」3~4回にわたって機首は地面と摩擦を起こし、火花が散った。緊張した空気が流れた。そして数秒後、速度の落ちた旅客機は止まった。テレビでは「成功です。成功です」という興奮したアナウンスが繰り返された。
歓呼は機内の乗客たちからもあふれた。旅客機が立ち止まると乗客たちは一斉に拍手しながら歓呼した。状況を伝えていた記者はほとんど泣き出しそうだった。
消防車が駆けつけ旅客機胴体に放水して胴体を冷やすなど緊急安全措置を取り、5分後、乗客たちは機内から出た。ただの1人の死傷者もいなかった。
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