|
日本人のソウルの夜の観光で欠かせないのが梨泰院(イテウォン)だった。 特に、トランスジェンダーが従業にいるクラブは大人気だった。 2000年代初めまではそうだった。 華麗な照明と激しい音楽の中で、「スタイルのよい女性(?)」のセクシーな姿は好奇心を引くのに十分だった。 そのためか、この場所を訪れる韓国人も多かった。
当時、日本人を相手にした観光ガイドブックはここを「性の解放区」と表現した。「‘第3の性’が作りだす異色の楽しみをどうぞ」 このクラブの従業員らは妙な雰囲気を作って客を誘惑した。 しかし酒が一、二杯ずつ入ると、自らの悩みを打ち明ける従業員が多い。 彼らの最も大きな望みは大きく2つある。 早くお金を稼いで性転換手術をすること、自分の戸籍上の性が女性に変わり平凡な女性として地位を享受しながら生きていくことだ。 韓国の場合、4000人-1万人余が性転換手術を受けたと推定される。 さらに性的アイデンティティーのため混乱を感じる人まで合わせると、性的少数者は数万人にのぼると予想される。
性転換症(Transsexualism)について医学界が学問的関心を持つようになったのは1950年代以降。 デンマーク・コペンハーゲンで性的アイデンティティー障害を体験したジョージ・ジョーゲンセンという若者が、52年즂初めて性転換手術を受けてからだ。 200年ごろ、エラガバルスというローマ皇帝が男性切開手術を受けて女性になったという話もあるが、これはよく分からない。 60年代に入ってジョンズ・ホプキンス大学に性アイデンティティークリニックセンターが設置されたのをきっかけに、世界各国で性転換手術が行われ始めた。 国際保健機構(WHO)は94年▽自身の解剖学的性に対する不便さ▽自身と別の性で生きたい欲望▽自身が望む性に一致するようホルモン治療や手術を受けようという欲求--がある場合、性転換症患者と規定した。
韓国の場合、根強い儒教的慣習などのため性転換症を見る目は厳しかった。 自身の性を変えてほしいという性転換症患者の訴訟も各裁判部で判決が異なった。 最高裁がついに自身の性を変えた50代の人に対し、「人間らしい生活をする権利がある」として、戸籍上の性別変更を認めろという判決を下した。 しかし宗教界と法曹界の一角からは「裁判所が人間の性までも決める全知全能な神になったようだ」という批判もある。 ひょっとして人間性鑑別士という新しい職業が生まれるのではないか。
この記事を読んで…