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もっと愛してくれと年上の恋人に甘える子どもっぽいイメージの貴公子、チョ・インソンは当分忘れてもよさそうだ。某映画誌で「すぐに辞めてもらいたい最悪の俳優」(03年の映画『南男北女』)に選ばれた恥も十分そそぐことができそうだ。
新作『卑劣な街』(監督:柳河)は俳優チョ・インソン(26)の出発と可能性を知らせる作品だ。成功と没落を体験する暴力団の組長を通じて、都会的かつソフトな外見の裏に隠された暴力性と男性性を引き出す映画だ。定型化したり美化されていない「本物の人間、暴力団組長」が登場する映画であり、今後、堂々と俳優と呼ばれるチョ・インソンの新しい姿を見せてくれる映画だ。
「自分の中の男性性・強さを引き出したく、暴力団を素材にした映画を選んだ」というチョ・インソンは、素直な演技で、欲望と裏切りのドラマを安定的に導いていく。ぱっと目立つほどの強烈なインパクトの演技ではないが「目立たないように」というのが、むしろ監督の要求だった。監督は「熱演するな」と注文し、チョ・インソンはトレードマークになってしまった感情過剰の状態から抜け出し「生活感のあるセリフのニュアンスをきちんと生かす」基本に戻った。
キャラクターに溶けこむまで時間がかかるのを考慮し、時間の順に撮影した後、感情に没入できた段階で、再び前のシーンに戻り撮りなおす強行軍が繰り返された。アクション映画だっただけに肉体的な苦痛があったのは当然のこと。「こんなことをやっていたら死ぬ」という気がしたのも1度や2度ではなかった。体でぶつかり合い、そこからリアルな憤怒が出てきて、次の動作につながるアクションだった。
『友へ(チング)』の張東健(チャン・ドンゴン)、『甘い人生』の李炳憲(イ・ビョンホン)、ファン・ジョンミンなど。映画街・忠武路(チュンムロ)の男性俳優が一度くらい挑戦する「暴力団の演技」への期待感はどうだっただろうか。
「格好良い暴力団ではなく、本物の暴力団のように思われなければならないのが、非常にむずかしかった。実際、暴力団に会い言葉使いや行動などを観察したが、外見が似ているからといって本物の暴力団ではない。無数の暴力団関連の映画を参考にしたが、自分だけの暴力団のキャラクターを見いださなければならなかった。長い間悩み、芸能人が自分の職業であるように、暴力団も自分の職業だと思ったら、答えが得られた。その次には、自分の中の暴力性を自然に沸きあがらせた」。
「26歳の自分が感じた人生の卑ろうさがきちんと盛り込まれたのかどうか、気になる」というチョ・インソンは「主演俳優の徳性、スタッフとの関係、俳優との呼吸など多くのものを学び、良質の結果を得た。それだけでも十分満足し、感謝している」と語った。
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