オスカー賞で最優秀作品賞・監督賞など５部門にノミネートされたスティーブン・スピルバーグ監督の新作『ミュンヘン』に、米保守主義者とユダヤ人コミュニティーの原理主義者らが激しく反発している。

この映画が、パレスチナの立場を代弁している、とのことが主な理由。同映画は、１９７２年のドイツ・ミュンヘン五輪当時、パレスチナのテロ組織がイスラエル選手１１人を殺害した事件を契機に、イスラエルが秘密組織を動員し、報復作戦を繰り広げる過程を描いている。


ハリウッドを代表するユダヤ人の一人、スピルバーグ監督は、メディアとのインタビューで「この映画は、その残酷な事件を偏見なしに客観的な立場から描写しており、この映画が、紛争が絶えない中東地域で『平和を祈る祈り』の役割を果たしてほしい」との考えを示した。しかし、ユダヤ人らは▽同監督が映画のセリフを通じてパレスチナの立場を説明する機会を提供し▽イスラエルの政策を頻繁に批判してきたトニー・クシュナーに脚本を任せた、として不満感を示している。


これについて、スピルバーグ氏は「『ミュンヘン』は決してイスラエルを攻撃するものではないし、『暴力に暴力で応じる』イスラエルの政策についてもほとんど批判していない」と釈明した。だが、ユダヤ人作家のジャック・エンゲルハード氏は、昨年１２月『ミュンヘン』について「スピルバーグ監督はイスラエルの友達ではない」と非難している。