「卓上行政」。現実を無視した行政を批判する言葉だ。公務員が机に座りながら、頭と書類だけで政策を作り出すことをいう。

公務員が卓上行政をするのには、どういう理由があるのだろうか。座っているのが好きだからか、能力がないからか…。

米国の行政学者レニー・レーンとジェームス・ウルフは、これについて行政文化の観点から説明した。レーンとウルフは、政府組織が業績と成就をあまりにも強調した場合、卓上空論的な行政が出てくる危険があると述べた。公務員らは業績を出すために焦り、時には興奮することもあるということだ。レーンとウルフはこれを「高いエネルギー文化（ｈｉｇｈ－ｅｎｅｒｇｙ　ｃｕｌｔｕｒｅ）」と表現した。


こうした文化では、公務員らは何か一つを達成しなければならないという考えで仕事に没頭するようになるという。夜勤を日常的にしながら、疲労を感じることもない。仕事を好み、仕事を多くこなしてこそ有能だと信じる。みんなが仕事に狂ってしまう。高度成長期のわれわれの官僚らがそうである。

問題は仕事にエネルギーを注ぎ過ぎると、批判意識が委縮するという点だ。一致団結して熱心に仕事をする公務員らには、外部の批判がよく聞こえないという。これほどになると、自分たちの判断は常に正しいという幻想に陥り、視野も狭くなる。世論を聞くこともわずらわしく感じる。また、一つひとつ確認する代わりに、新しいことをゲリラ式に作り出して推進するようになるという。

レーンとウルフは、これがひどくなった場合、目標が手段を正当化しうると指摘した。にもかかわらず、公務員らは「国民のための行政」という使命感にとらわれるという。これが現実とぶつかりながら卓上行政という批判を受ける、という説明だ。

新年、全国の自動車ナンバープレートを作りながら、１２日ぶりにデザインを変えることにした建設交通部（建交部）が、まさにこうしたケースだ。「田舎くさい」という批判に対し、当初は「自動車登録体系の革新に焦点を合わせたものであり、理解してほしい」と対応した。些細なことでいちいち文句を言うなということだ。善意の目的を前面に出しながら、手段の拙速をかばおうとしたのである。結局、後日には世論を十分に反映しなかったことを認めた。意欲はよかったが、外部の意見を等閑視したことで、恥をかいたのだ。公務員らのエネルギーを卓上ではなく、足を運んで燃焼させる方法はないだろうか。