2021年8月、アフガニスタンのカブール空港で米軍撤収作戦当時に撮影されたクリストファー・ドナヒュー米陸軍少将(当時)。AP=聯合ニュース
2021年8月30日午後11時59分。アフガニスタンの首都カブールの空港にいた米軍のC-17輸送機5機のうち、最後の輸送機が離陸した。当時、ジョー・バイデン米政権が設定した撤収期限(8月31日)まであと1分という時点だった。20年間にわたる米軍のアフガニスタン駐留が終わる瞬間だった。
輸送機に最後に乗り込んだ軍人であり、写真の主人公が、当時アフガニスタン撤収作戦を指揮したドナヒュー第82空挺師団長(少将)だった。指揮官が最後の輸送機に乗り込んで作戦を終えるという空挺部隊の伝統に従ったものだ。従軍写真兵がこの場面を暗視装置で撮影し、「アフガニスタン最後の米軍兵士」という修飾語で世界に知らされた。
しかし、将軍の責任感ある撤収の姿は、彼を退役に追い込む発端にもなった。撤収作戦終了の4日前、カブール空港のゲートでイスラム国(IS)による自爆テロが発生した。米軍兵士13人とアフガニスタン人約170人が死亡した。当時、政権を離れていたドナルド・トランプ氏(現米大統領)は「バイデン政権は失敗した作戦でテロが起きても責任を取る将官がいない」と攻勢をかけた。昨年、第2次トランプ政権が発足した後、ピート・ヘグセス国防長官の主導で将官が相次いで粛清されるきっかけの一つとなった。
ドナヒュー氏はヘグセス長官がむやみに揺さぶりをかけるには軍内の基盤が強固な、人望の厚い将軍だった。ドナヒュー氏は米陸軍士官学校(ウェストポイント)を卒業後、エリートコースを歩んだ。陸軍最精鋭の対テロ部隊「デルタフォース」出身だ。イラク戦争に参戦するなど特殊戦作戦と指揮・統制に精通していた。「一世代に一人出るかどうかの名将」と呼ばれた。2021年にアフガニスタンから撤収した後も、欧州駐留第82空挺師団長(中将)、陸軍欧州・アフリカ司令官(大将)と出世街道を歩んだ背景だ。
実戦経験が豊富で無骨そうに見えるが、アイデアも豊富だった。欧州でウクライナを支援した際には、ドローン(無人航空機)が戦場の「ゲームチェンジャー」に浮上することを見越し、ドローンとドローン迎撃機、人工衛星、人工知能(AI)を組み合わせた「東部戦線抑止構想」を推進したこともある。
ドナヒュー氏は第2次トランプ政権発足後、北大西洋条約機構(NATO)連合軍を指揮する次期米欧州軍司令官の有力候補だった。ダン・ケイン統合参謀本部議長が強く推薦したが、別の人物が任命された。するとランディ・ジョージ陸軍参謀総長とダン・ドリスコル陸軍長官がドナヒュー氏を次期陸軍参謀総長候補として改めて推薦した。しかし、側近を要職に指名したかったヘグセス長官がすべて退けた。
ヘグセス長官は3月、ジョージ参謀総長を通じてドナヒュー氏に辞表を提出するよう圧力をかけた。しかしジョージ氏は逆にドナヒュー氏をかばい、4月に任期を全うできないまま解任された。ドリスコル氏も友人のJ・D・バンス副大統領とドナヒュー氏の面会を取り持ち、ドナヒュー氏を陸軍参謀総長に推そうとした。しかしヘグセス長官の妨害で実現しなかった。ドリスコル氏も最近辞任した。
ドナヒュー氏を救うために奔走したジョニ・アーンスト共和党上院議員は、ドナヒュー氏に「陸軍未来司令部を率いて構想を展開してみてはどうか」と最後に提案した。しかしドナヒュー氏は「ヘグセス長官が私を望むだろうか」とし、先月27日に自ら退役した。地位に執着しない、潔い退場だった。ニューヨーク・タイムズ(NYT)が6日に報じた米国防総省の将官人事をめぐる舞台裏だ。
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