洪水の危険性が高いペルーのパルカコチャ湖。この湖の下流にあるワラス市には、12万人以上が暮らしている。[ジャーマンウォッチ]
最も差し迫った危機に直面しているのはペルーだ。ペルー国立氷河・山岳生態系研究所(INAIGEM)のパオラ・モシェラ所長は現地メディアに対し、「ペルー国内には氾濫の恐れがある湖が528カ所あり、このうち58カ所は高リスクに分類されている」と語った。特にアンデス山脈に近いアンカシュ地域では、都市や主要インフラが、洪水や地滑りの想定経路上に位置している。
◇パルカコチャ湖が決壊すれば住民12万人が危険に
パルカコチャ湖は、その代表例だ。同湖から南西に23キロ離れた都市ワラスには、約12万人が暮らしている。約1700万立方メートルの水をたたえる湖に、温暖化によって溶けた氷河の一部が落下した場合、巨大な波が堤防を破壊し、1時間もたたないうちに市街地全体をのみ込む可能性がある。実際、1941年にはパルカコチャ湖が氾濫し、ワラス市の3分の1が壊滅した。最大で住民7000人が死亡したと推定されている。
アルゼンチンでは、ネパールと同様の大洪水を何度も経験している。2005年には、サンフアン州のエリソス湖の決壊により、3100万立方メートルもの水がわずか67分で流出し、250キロ以上にわたって下流域をのみ込んだ。この地域にはほとんど人が住んでいなかったため、人的被害は発生しなかった。
2013年にも、アンデス山脈南部のパタゴニア地域に近いウプサラ氷河付近で氷壁が崩壊し、せき止められていた大量の水と氷塊がオネリ湾へ流れ込み、津波級の波が発生した。現在、特に危険性が高いとされるのが、有名な観光都市エル・チャルテンだ。近くのトーレ湖で、氷河の崩壊などによる洪水が発生する可能性が高いためだ。
2万6000以上の氷河を有するチリでも警戒が強まっている。チリでは、首都圏と中部地域に暮らす数百万人の飲料水のほか、水力発電所や鉱山などもアンデス山脈一帯の河川に依存している。氷河が崩壊すれば、経済的、社会的に大きな打撃を受ける可能性がある。アイセンやマガジャネスなど、パタゴニア一帯でも氷河が急速に溶け、危険性が高まっている。
欧州のアルプス山脈でも、地滑りや洪水の危険性が高まっている。昨年5月、スイスのブラッテンでは、氷河の崩壊によって近くの山全体が崩れ、約900万立方メートルの岩石と氷が一気に谷へ流れ込んだ。これにより、村の面積の約90%が埋没した。迅速な事前警告によって住民約300人が避難し、人的被害は1人にとどまった。
2017年にも、スイスのボンドで大規模な地滑りが発生し、約310万立方メートルの岩石と土砂が水と混ざって村を襲い、登山客8人が死亡した。
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