崩壊前のランタン・リルン北面(上)と、岩石と氷河が崩壊した後のランタン・リルン北面の様子。[AFP=聯合ニュース]
2015年にはランタン・リルン南斜面でも大規模な岩石・氷河・雪崩が発生し、約350人が死亡した。当時はM7.8の大地震が原因だった。しかし今回のランタン・リルン崩壊時には地震がなかった。単に氷河が溶けたためとするだけでも説明は不十分だ。ランタン流域の氷河が長期間にわたって急速に減少してきたのは事実だ。今年6月、英国・ネパールなどの研究チームが『グローバル・アンド・プラネタリー・チェンジ(Global and Planetary Change)』に発表した研究によると、ランタン流域の氷河面積は19世紀初めから2023年までに約41.5%減少した。1964年以降は減少速度が4倍以上に速まり、2000年代以降はさらに加速した。しかし、氷河の減少が今回の崩壊の直接的な原因だという証拠はまだない。
では、温暖化が山そのものを弱くしたのだろうか。山岳地域の岩盤には無数の亀裂や節理があり、その隙間を氷が埋めることもある。氷が溶ければ岩盤をつなぎ止めていた力が弱まり、斜面が不安定になる可能性がある。氷河が後退し、それまで氷に覆われていた岩壁が露出することも、こうした変化を示す現象だ。しかし、今回の崩壊で実際に起きたという直接的な証拠はない。ランタン一帯は急斜面の山岳地形と亀裂・節理が発達した岩盤が重なり、斜面崩壊に脆弱な地形だとの分析もある。
崩壊直前の異常高温は注目に値する。英国南極調査局(BAS)の氷河学者ハミッシュ・プリチャード氏は27日、英サイエンス・メディア・センター(SMC)に対し、事故地点から約10キロ離れた研究チームのセンサー資料を根拠に、崩壊の2日前の地表面温度が直近2年間で最も高かったと明らかにした。プリチャード氏は、高い気温が雪を緩めてクレバスに水を満たすとともに、氷と岩石をつなぎ止めていた結合部を溶かした可能性を示した。
永久凍土層の融解も原因の一つとして挙げられている。英キール大学の物理地理学者リチャード・ウォーラー教授は27日、ガーディアンに対し、高山の岩盤の亀裂を埋めている氷が溶ければ、岩石をつなぎ止めていた力が弱まり、斜面崩壊の危険が高まる可能性があると説明した。ただし、今回の崩壊面で永久凍土層が溶けたという現場の証拠はまだない。長期にわたる温暖化が斜面を弱体化させる背景となった可能性はあるが、巨大崩壊を直接引き起こした最後の引き金が何だったのかはまだ明らかになっていない。
◇土石流はどのように巨大な津波になったのか
巨大な土石流はランタン・リルン北斜面から22キロ離れた吉隆国境検問所まで瞬く間に到達した。中国の地質学者、郭兆成氏によると、崩れ落ちた氷河・岩石が谷に沿って流れ下りながら氷堆石(モレーン)と堆積物をさらに巻き込み、この過程で巨大な土石流に変わった。移動速度は秒速50メートルを超えたと推定される。
土石流は必ずしも先に大雨が降らなければ発生しないわけではない。今回のように大規模な山の斜面崩壊が谷の水や氷、堆積物を一度に動かすことで発生することもある。水が岩石と土の間に入り込むと粒子間の摩擦が減り、流れははるかに流動的になる。さらに谷底の堆積物や岩石まで巻き込み、流れの量と規模が大きくなる。米テキサス大学サンアントニオ校の水文学者ハティム・シャリフ氏は、これを「液体コンクリート(liquid concrete)」と表現した。
特に狭く急傾斜の谷は、崩壊物質が土石流に変わって高速で移動する通路の役割を果たした。30日の新華社によると、中国科学院の調査チームは、標高5200メートルから崩れ落ちた氷河と岩石が急斜面を流れ下る過程で大きなエネルギーを得て、移動中に生じた摩擦熱と衝突で氷が溶けてできた水が周辺の氷堆石と堆積物を巻き込み、巨大な土石流に変わったと分析した。土石流は吉隆国境検問所に到達して約0.7平方キロを襲い、建物と付帯施設27カ所を破壊した。
中国科学院の陳方研究員は、高解像度衛星リモートセンシングとドローンを活用し、吉隆検問所一帯の氷河・氷河湖を継続的にモニタリングしていると明らかにした。
何がランタン・リルンを崩壊させたのか…氷河崩壊が「液体コンクリート」の津波に(1)
この記事を読んで…