2017年に「湖巌(ホアム)賞」医学賞を受賞したテラジェンバイオ代表のペク・スンミョン氏。当時は延世大教授として研究を率いた。 キム・ソンリョン記者
ペク代表は乳がん標的抗がん剤「ハーセプチン」の初期臨床研究や、乳がん精密診断検査「オンコタイプDX」の開発に参加した。サムスンがん研究所長や延世大医学部教授などを歴任し、20年以上にわたりがんゲノムを分析しながら患者ごとの治療法を見つけ出すがん精密医療を研究してきた。2020年にテラジェンバイオに加わり、新生抗原を基盤とした個別化がんワクチンを開発している。
ペク代表に今回の臨床結果の意義と限界、韓国国内での開発の現状について尋ねた。
--今回の第3相臨床試験の意義は。
手術後の高リスク群の黒色腫患者に対し「キイトルーダ」(免疫の力を引き出した抗がん剤)のような免疫チェックポイント(immune checkpoint)阻害剤とがんワクチンを併用した場合、再発のリスクを低下させたという点が重要だ。また、多くの企業が開発してきた個別化がんワクチンの効果を第3相臨床試験で初めて実証したという点も注目を引く。
--従来の治療と比べて、何が新しいのか。
従来の免疫チェックポイント阻害剤は、がんに対する免疫反応がすでに生じている患者に効果を発揮する。がんワクチンは、がん細胞の変異情報を免疫細胞に認識させることで「免疫反応がなかった患者」にも新たな免疫反応を作り出す。ただ、がん細胞も「盾」を作り出すため、免疫チェックポイント阻害剤を併用する必要がある。
ペク代表は、がんワクチンがすべてのがん患者に適用できるわけではないと強調した。特に末期がんはがん細胞の数が多いうえ、ワクチンによって免疫反応が生じるまでに時間がかかるため、適用するのが難しいという説明だ。主な対象となるのは、手術によって腫瘍の大部分を除去できる患者のうち、標準治療では効果を得るのが難しい患者などだ。今回のモデルナ・メルクによる第3相臨床試験も、手術によって腫瘍を完全に除去した後、再発リスクが高い黒色腫患者を対象とした。
--韓国国内の個別化がんワクチンの開発はどの段階にあるのか。
ゲノム解析と新生抗原予測技術はかなりの水準まで発展している。解析・設計は個別化がんワクチン開発の核心技術だ。患者のがん細胞を分析して遺伝子変異を見つけ、その中から免疫反応を引き起こす可能性が高い新生抗原を選んで患者ごとのmRNAワクチンを設計するのに必要となる。
ペク代表は韓国国内での開発過程において、患者ごとのmRNAを少量ずつ迅速に生産する製造工程の構築が課題とみている。韓国内の委託生産施設は100万人分ずつ生産するような大規模生産工程を中心としている。mRNAを保護するためには、これを患者ごとにLNP(脂質ナノ粒子)に封入する必要があるが、韓国内でGMP生産が可能な関連設備はほとんどが大量生産用だ。
海外メディアによると、モデルナの個別化がんワクチンはがん組織の分析からワクチン投与まで約6週間かかる。同社は新型コロナの流行前から個別化がんワクチンを開発し、2018年には患者ごとの臨床用mRNAを生産する専用施設を稼働させた。
ペク代表は、少量生産用設備の開発が終われば来年から韓国内でも関連の生産工程を備えることが可能とみている。テラジェンバイオが臨床試験に入る時期については2028年末~2029年ごろと予想した。
費用も課題だ。ペク代表によると、2年前の委託生産費用は患者1人あたり10億ウォン(約1億円)を超えていた。現在の推定生産費は3億ウォン未満で、今後1億ウォン以下に引き下げることを目標としている。
この記事を読んで…