ウクライナのゼレンスキー大統領
ウクライナの立場では北朝鮮を攻撃する大義名分は十分にある。北朝鮮がロシアを支援するために1万4000人の兵力を派遣したクルスクの戦闘は事実上終わったが、ロシアに対する北朝鮮の支援は続いている。北朝鮮は依然としてミサイルや砲弾などの軍需物資をロシアに供給している。先月30日、ウクライナはロシアから発射されて自国を攻撃したミサイルが北朝鮮製だと主張した。これが事実なら、今年に入ってロシアが北朝鮮製ミサイルを使用した最初の事例となる。北朝鮮指導部はウクライナを「西側の下手人」と描写し、ロシアの侵略行為や北朝鮮の関与を美化している。
さらにウクライナがイランの船舶を攻撃した当日、ウクライナのゼレンスキー大統領は北朝鮮とロシアが3万人の北朝鮮軍の追加派兵について議論していると主張した。過去に北朝鮮関連のウクライナ側の主張の一部が事実ではないと明らかになったが、先月20日にロシアを訪問した北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相とロシアのプーチン大統領が会談し、関連の議論をした可能性も排除できない。北朝鮮軍の追加派兵がある場合、実際の戦闘でなく後方任務をするとしても、ロシア軍が最前線に向かうことにつながる。ロシアの戦争遂行能力を後押しするということだ。ウクライナの立場からすれば北朝鮮は潜在的な脅威となる。
したがってウクライナはロシアが計画中という「秋の大攻勢」に備え、北朝鮮軍の追加派兵や軍需物資を遮断するための対策を講じると予想される。さらにウクライナと北朝鮮の距離を考慮すると、イランの船舶を攻撃した当時よりも戦争が拡大する可能性は高くない。また、2024年に北朝鮮とロシアが一方が攻撃を受けた場合に自動参戦する内容の「同盟条約」を結んだことを理由に挙げれば、国際社会に対して対北朝鮮攻撃の名分を説明するのも容易だ。ウクライナの対北朝鮮攻撃が成功する場合、勝者を好むトランプ大統領にも強い印象を残すことができる。
では、ウクライナの北朝鮮攻撃は可能なのか。イランへの攻撃当時、ウクライナはイラン領土内の標的を直接狙うのではなく、ロシア領海に停泊していたイランの船舶を攻撃した。北朝鮮もロシアへの支援物資の大半を海上輸送しているため、北朝鮮の軍需物資を積んだ船舶がロシア領海に停泊する場合が多い。ウクライナは第3国の港を経由して航続距離3000キロ超の最新ドローンを船舶に積み込み、太平洋まで運んだ後に発進させるという方法で、距離の問題を解決できる。複雑な防空網やジャミング(電波妨害)を突破しなければならなかったイラン攻撃作戦よりも、むしろ(ロシア領海で)北朝鮮を攻撃する方が難易度が低いため、ウクライナがその気になれば十分に実行可能なシナリオだ。
実際にウクライナの攻撃が行われれば、平壌(ピョンヤン)としては朝鮮戦争以来初めて外部からの攻撃を受けることになるため、極度に猛反発する一方で、大きな衝撃を受けるはずだ。即座の反応はより強力な報復の脅威になるが、結局はウクライナが戦争拡大の主導権を握っていることを思い知らされるだろう。北朝鮮の対ドローン防衛網は脆弱であるため、最高指導部の隠れ家までが危険にさらされる可能性もある。結局、イランが戦争拡大を望まなかったように、北朝鮮も戦争拡大を避けるための外交的な名分を探そうとするだろう。
では、その後はどうなるのだろうか。金正恩(キム・ジョンウン)委員長の威信は致命的な打撃を受け、相当な政治的混乱が避けられない。北朝鮮は追加攻撃による体制の不安や屈辱を防ぐと同時に、ロシアとの軍事取引が強制的に中断しないことを望むだろう。通常、北朝鮮は守勢に回った際に交渉に出てくる。最も可能性の高いシナリオは、攻撃停止の約束と引き換えに派兵を撤回する「不名誉な妥協(shabby deal)」だろう。
これらすべてのシナリオは小説のように聞こえるかもしれない。しかしこれまでドローン分野の優れた専門性と戦略的革新によって相手の意表を突いてきたウクライナの戦争パターンには合致する。
ジョン・エバラード/元平壌駐在英国大使
◇外部執筆者のコラムは中央日報の編集方針と異なる場合があります。
※外部筆陣寄稿は本紙の編集方向と違うことができます。
この記事を読んで…