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◇「ミュトス」が触発したサイバー安全保障戦
最初に、最近のAI地政学の急迫する展開は「ミュトス・ショック」が触発した。ミュトスは4月にアンソロピックが発表した最先端エージェントAIモデルだ。ソフトウエアのセキュリティホールを自ら探知する優れた能力が大きな衝撃を与えた。セキュリティ用に使うこともできるが、敵性国や犯罪組織によって悪用される可能性もあるためだった。中国もサイバー安全保障分野で米国に劣らぬエージェントAI能力を持つことがわかった。中国企業の智譜(ジープ)と360セキュリティもミュトスに劣らぬ高性能のサイバーAIを発表した。AIの戦略的重要性が急浮上し、米CIA長官が先端AI技術を「デジタル核兵器」と例えて波乱を起こした。中国でも「AI時代のサイバー核兵器」という表現が出てサイバーAI武器競争が始まったのではないかとの憶測も出てきた。
◇人為的国境線作る米国のモデル規制
2番目に、その後続いた米国のAIモデルに対する輸出規制がAI地政学の新たな局面を広げた。企業専用の「ミュトス5」と一般ユーザー用「フェイブル5」に対し、「外国人」のアクセスを全面遮断した。フェイブル5の安全装置を突破する「脱獄」技法を通じて悪意あるサイバー攻撃が加えられかねないという理由だった。この措置はまもなく解除されたが、これまで米国が中国に対して課してきた輸出規制の性格を変えた措置と解釈された。既存の輸出規制が主に半導体のような物質的財貨の国家間移動を狙ったとすれば、今回の措置は超国籍サービスを提供する民間AIモデルのアクセスを制限した点が違った。その上アクセス遮断対象に同盟国も含まれ大きな波紋を起こした。超国籍で作動するデジタル空間に人為的に国境線を画定する無茶なやり方という指摘が提起された。
◇扉閉める中国、フルスタック競争
3番目に、AI地政学の展開という点で中国の最近の変化にも注目しなければならない。これまで中国は、性能は足りなくてもコストパフォーマンスと開放性を掲げて自国のAIモデルを拡散する戦略で米国の圧力に対応してきた。しかし最近では中国も最先端AI技術保護に向け輸出を規制する対抗措置を相次いで出している。4月に中国系AIスタートアップ、マナスの売却を撤回しろという要求があった。合わせて中国の資金と人材の流出を制限する各種措置が動員されている。米AI企業のコーディングツールやセキュリティホールが見つかったとし応戦の警告も飛ばした。ディープシークやムーンショットなどのオープンウェイトAIモデルに対する外国企業のアクセスを制限する案も議論された。中国まで態度を変え、米中両国がいずれも外に出る扉を閉ざす状況が広がっている。
【コラム】「デジタル核兵器」を手にした米中AI全面戦(2)
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