昨年11月、米ホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領(左)がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と言葉を交わしている。AFP=聯合ニュース
◇保守系メディアの批判受け発言を翻したトランプ氏
混乱を招いたのはトランプ氏自身だった。協定の骨子は、米企業がサウジの原子力産業に技術や設備などを輸出する一方で、ウラン濃縮やプルトニウム再処理を通じてサウジが自国で核物質を確保できる可能性を残す内容だった。韓国やアラブ首長国連邦(UAE)にも認めなかった「特別扱い」に対し、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)やFOXニュースなど保守系メディアまで、アブラハム合意への参加も引き出さずに与えた「大盤振る舞い」だと批判した。これについて、トランプ氏が当初は存在しなかった前提条件を慌てて持ち出したのではないかとの見方を米メディアは伝えている。
トランプ氏が示した前提条件は、実際には米国の従来の立場でもある。米国はサウジが原子力発電技術の支援を求めるたびに、先決条件としてアブラハム合意への参加を求めてきた。アブラハム合意は、第1次トランプ政権時代の2020年9月、トランプ氏の仲介でイスラエルとUAE、バーレーンが締結した国交正常化協定だ。ユダヤ教、イスラム教、キリスト教が共通の祖とする旧約聖書の人物「アブラハム」に由来している。
トランプ氏はサウジを加えることで、この合意に「画竜点睛」を施したい考えだった。イスラム教スンニ派の盟主であるサウジが加われば、中東での反イスラエル・反米の流れを最小限に抑え、イスラエルと湾岸諸国による安全保障の枠組みでイランに対抗する構図を築くことができるためだ。しかし、2023年10月にガザ地区で戦争が始まったことで状況は一変した。サウジはパレスチナ国家樹立の問題が解決するまでは合意に参加しないとの立場を堅持している。
◇戦争長期化でサウジが必要となった米国
停滞していた原子力協力が一気に進展したのは、結局のところ、米国が「先にアブラハム合意、後に核開発」という条件を譲歩したためだ。その背景には約5カ月に及ぶイランとの戦争がある。サウジは戦争の過程でイランのドローンやミサイルによる被害を受け、これまで米国の軍事力に安全保障を依存してきた政策に疑問を抱き、独自行動に出る可能性を残すようになった。
一方、米国の立場では、戦争が長期化するほど、サウジなど米軍基地を抱える湾岸諸国の重要性が高まった。危機感を強めたトランプ氏としては、核開発という「アメ」を提示し、サウジを米国主導の安全保障秩序へ引き寄せる必要があった。米シンクタンク「アトランティック・カウンシル(大西洋評議会)」のアリソン・マイナー氏は、「イラン戦争が交渉に政治的な緊急性を与えた可能性がある」とした上で、「米国は警戒心を強めたサウジを安心させる必要があった」と指摘した。サウジが中国やロシアなどとの原子力協力に乗り出す可能性を封じる狙いもあった。
イラン核阻止のはずが、中東「核ドミノ」招く…トランプ氏の矛盾(2)
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